クリント・イーストウッド監督・共同製作・音楽、レオナルド・ディカプリオ主演の'11年作品『J・エドガー』をWOWOWシネマで見ました。FBIを創設したエドガー・フーヴァーの半生を描く映画でしたが、様々な時制が平行して進む、くすんだ色調の不思議な映画でした。
さて、アーサー・ビナードさんの'05年作品『日本語ぽこりぽこり』を読みました。'05年に講談社エッセイ賞を受賞した本です。
この本を読んで学んだことは、英語にはだれかがくしゃみをしたら、周りの人が必ずいってあげる言葉「Bless you」という慣用句があり、これは「God bless you 」の短縮形で、昔々、人々はくしゃみを不吉の前兆、あるいは悪魔が体内に入ってくるスキというふうに捉えたらしく、身を守るために発したマジナイだということ、沖縄にもくしゃみの後には「クスクェーヒャー」、標準語に訳すと「糞食らえ」という言葉があること、くしゃみの古語「くさめ」については『広辞苑』に「くしゃみが出たとき唱えるまじないの語。〈休息(くそく)万病〉を早口で言ったものという」という説明が出ていること、「われ以外は皆わが師なり」という吉川英治が作った格言があること、ビナードさんに会う多くの日本人は「一期一会」という言葉を教えたがり、それは比率でいうと女性のほうがやや多いのですが、それに対し中年男性がよくトイレで教えようとするのに「つれション」があるということ、ビナードさんの義父が教えてくれた“戦争責任早解り法”は「地図を広げ、どこで、だれがやっているか、それさえ見れば大体、戦争責任の所在は明らかだ」ということ、トルーマンが残した名言に「この世で新しいのは、お前らが知らない歴史だけだ」というものがあり、要するに、今、世界各地で行われていることはみんな過去の二番煎じにすぎないが、過去を見抜いていない連中が、新しい動きだと思い込む、というわけであること、人間が宇宙へ出かけて、実際に得られるものはといえば、下痢と不眠、長期滞在すれば骨がスカスカ、筋肉も心臓も衰え、免疫力が低下、うつ病にもかかりかねない、いわば実験動物としてミールにのった宇宙飛行士たちが、そういった人体への影響を詳しく調べてくれたけれど、それ以外の研究成果はゼロといっていいほど得るものがなかったこと、ならば国際宇宙ステーションはなぜ作るのかというと、箱物行政を軌道にのせるためと、勇敢な人間が宇宙から生還すればマスコミが騒いでくれ、それが予算の確保にかかせないからであること、昭和12年から14年にかけて『都新聞』(現『東京新聞』の前身)に痛烈なコラムを執筆していた小熊秀雄が書いた童話『焼かれた魚』に著者が魅せられたこと、著者はおもしろい詩に出会うと、その詩が載っている本をリュックに入れて何日も持ち歩いたり、コピーを取ってセロテープで部屋の壁に貼ったり、それでももの足りないときは、翻訳してみたりすること、現在の鉄道の左右のレール間の最短距離は、英国の鉄道の軌道が最初から4フィート8.5インチという標準になっていたからで、それは鉄道以前の「木製軌道」のときの車両のホイールの間がその幅であったためであり、古い街道には馬車による深い轍があり、車輪がその轍の幅に合わなければ、壊れたり馬車がひっくり返ったりしかねなかったためで、ではその轍の幅はというと、これはローマ軍の標準「2頭立て二輪戦車」に由来し、それは馬の臀部×2というサイズで作られたのだということ、日本には血液型対応コンドーム『ABOBA』というものが存在し、それについてくる「どっきん栞(しおり)」には、自分の血液型と相手の血液型に応じた相性とアドバイスが印刷されていること、陰毛かつらというものも存在し、無毛症の大半はしもの毛だけが欠如していて、結婚間近の女性や修学旅行間近の女性が両親と一緒に買いに来ることが多いこと、“ヒバチ”は英語では七厘(しちりん)の意味で使われていること、普通の煮炊きはたった七厘ほどの炭で間に合うところからシチリンの名がついたこと、飛行機に乗る際、スーツケースを預けると、行方不明になったり、ぶっ壊されたり取っ手がもがれたり、また、中身が物色されたり掻き回されたりすることがよくあること、などなどでした。
全体的に言葉遊びを含むユーモアにあふれるとともに、鋭い批評眼も持ってらっしゃって、読んでいて楽しくもあり、痛快でもありました。リベラルな考え方を持ってらっしゃる方には、特にお勧めの本です。
→Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
さて、アーサー・ビナードさんの'05年作品『日本語ぽこりぽこり』を読みました。'05年に講談社エッセイ賞を受賞した本です。
この本を読んで学んだことは、英語にはだれかがくしゃみをしたら、周りの人が必ずいってあげる言葉「Bless you」という慣用句があり、これは「God bless you 」の短縮形で、昔々、人々はくしゃみを不吉の前兆、あるいは悪魔が体内に入ってくるスキというふうに捉えたらしく、身を守るために発したマジナイだということ、沖縄にもくしゃみの後には「クスクェーヒャー」、標準語に訳すと「糞食らえ」という言葉があること、くしゃみの古語「くさめ」については『広辞苑』に「くしゃみが出たとき唱えるまじないの語。〈休息(くそく)万病〉を早口で言ったものという」という説明が出ていること、「われ以外は皆わが師なり」という吉川英治が作った格言があること、ビナードさんに会う多くの日本人は「一期一会」という言葉を教えたがり、それは比率でいうと女性のほうがやや多いのですが、それに対し中年男性がよくトイレで教えようとするのに「つれション」があるということ、ビナードさんの義父が教えてくれた“戦争責任早解り法”は「地図を広げ、どこで、だれがやっているか、それさえ見れば大体、戦争責任の所在は明らかだ」ということ、トルーマンが残した名言に「この世で新しいのは、お前らが知らない歴史だけだ」というものがあり、要するに、今、世界各地で行われていることはみんな過去の二番煎じにすぎないが、過去を見抜いていない連中が、新しい動きだと思い込む、というわけであること、人間が宇宙へ出かけて、実際に得られるものはといえば、下痢と不眠、長期滞在すれば骨がスカスカ、筋肉も心臓も衰え、免疫力が低下、うつ病にもかかりかねない、いわば実験動物としてミールにのった宇宙飛行士たちが、そういった人体への影響を詳しく調べてくれたけれど、それ以外の研究成果はゼロといっていいほど得るものがなかったこと、ならば国際宇宙ステーションはなぜ作るのかというと、箱物行政を軌道にのせるためと、勇敢な人間が宇宙から生還すればマスコミが騒いでくれ、それが予算の確保にかかせないからであること、昭和12年から14年にかけて『都新聞』(現『東京新聞』の前身)に痛烈なコラムを執筆していた小熊秀雄が書いた童話『焼かれた魚』に著者が魅せられたこと、著者はおもしろい詩に出会うと、その詩が載っている本をリュックに入れて何日も持ち歩いたり、コピーを取ってセロテープで部屋の壁に貼ったり、それでももの足りないときは、翻訳してみたりすること、現在の鉄道の左右のレール間の最短距離は、英国の鉄道の軌道が最初から4フィート8.5インチという標準になっていたからで、それは鉄道以前の「木製軌道」のときの車両のホイールの間がその幅であったためであり、古い街道には馬車による深い轍があり、車輪がその轍の幅に合わなければ、壊れたり馬車がひっくり返ったりしかねなかったためで、ではその轍の幅はというと、これはローマ軍の標準「2頭立て二輪戦車」に由来し、それは馬の臀部×2というサイズで作られたのだということ、日本には血液型対応コンドーム『ABOBA』というものが存在し、それについてくる「どっきん栞(しおり)」には、自分の血液型と相手の血液型に応じた相性とアドバイスが印刷されていること、陰毛かつらというものも存在し、無毛症の大半はしもの毛だけが欠如していて、結婚間近の女性や修学旅行間近の女性が両親と一緒に買いに来ることが多いこと、“ヒバチ”は英語では七厘(しちりん)の意味で使われていること、普通の煮炊きはたった七厘ほどの炭で間に合うところからシチリンの名がついたこと、飛行機に乗る際、スーツケースを預けると、行方不明になったり、ぶっ壊されたり取っ手がもがれたり、また、中身が物色されたり掻き回されたりすることがよくあること、などなどでした。
全体的に言葉遊びを含むユーモアにあふれるとともに、鋭い批評眼も持ってらっしゃって、読んでいて楽しくもあり、痛快でもありました。リベラルな考え方を持ってらっしゃる方には、特にお勧めの本です。
→Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)