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サミュエル・フラー監督『クリムゾン・キモノ』その2

2018-05-26 04:52:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 マックにジョー「クリスは無事。ハンセルを逮捕したい。彼は家にいる。私服警官がついているが、トイレ以外は別室だ」。
 チャーリーとクリス、部屋の中。チャーリー「ピアノはジョーが弾く。出会いは僕が部隊長で彼が銀星賞の射撃兵だった時だ」「2世の勇敢な兵士ね」「一度脱走したことがある。病院から戦場にいた俺の部隊に来た」。ブザー。また写真が届けられる。ベッドでうつぶせになって泣くクリス。怯えているクリスを慰めるチャーリー。
 酔って暴れているシュート。取り押さえるチャーリーとジョー
 “L.A.図書館”の看板。図書館員、似顔絵を見て「ポール・サンド。アジアの研究家がハンセルに似ています。最近理由もなく退職しました」。
 日本髪のかつら職人に質問するジョー。「もうすぐ白人のかつら職人が来ます」ジョー「顔の広い女らしいな」チャーリー「朝鮮戦争の頃、結婚する奴のことを鼻で笑ってた。覚えているか、ジョー? 腰抜けが結婚をするんだと」ジョー「俺も腰抜けになった」チャーリー「どうした?」「クリスさ」「本気なんだな? 彼女は?」「大いに脈ありだ」「よかったな、長年独りでいた甲斐があったな」。白人女性現れる。「ローマ・ウィルソンです。ハンセルとは面識はありません。展覧会にいらっしゃいませんか? 恋人に日本人形を」。
 クリス、ジョーに「チャーリーは?」ジョー「情報屋のジギーのところへ」。
 ジギー「こんなところに呼び出すな。ヤクの売人に見られたら誤解される。シュガーと一緒の男、似顔絵の男の場所が分かった」。
 ジョーの部屋。クリス「あなたは剣道の達人ですって?」「(中略)年に一回大会がある」「ピアノを弾いて」「いいよ」。曲を弾く。「素敵な曲ね」「“赤とんぼ”という昔からある童謡だ。絵画は父のもの。最後の作品は“氷の中の黄金”。彼は芸術の中に生きていた」「あなたはなぜ警官に?」「好きだからさ。警官はめったに解雇されないし年金ももらえる」。
 ジギー「後ろの階段の最上階だ」。チャーリーが押し入ると、赤ん坊を抱いた女性「鞄を持って出てったわ。もう戻らない」「何かあったらバンクロフト巡査部長まで」「通報なんてごめんよ。殴られるのはまっぴら」。
 クリス「私とレンブラントを比較するなんて」ジョー「君の絵は未完成だ。未知の何か、作品の中から流れるものがある」「あなた、彼女は?」「いいや」「いつか運命の人が」「運命の糸を信じる?」「信じないわ」「俺もだ」「愛を学ばないと人は愛せない?」「愛は自然の感情だ」「ではなぜ抵抗を?」「かき乱すな」とジョーは去る。
 ジョー、ヨシナガに「女性のことで悩みが。クリス・ダウンズ」「白人か? それはつらいな」「クリスへの想いが断ち切れなくて」「なぜ?」「人を傷つけてしまう。私が恋に落ちるなんて」。
 チャーリー「ここにもハンセルはいない。やけに元気がないな」。ジョー、無言のまま。「まるで死んでるみたいだぞ。ここを調べる。見張ってろよ」。
 クリス、マックをデッサン。クリス「外国人を愛した経験は?」マック「何度も」「違う人種の人も?」「ボンベイのインド人を」「彼は肌の色を気にしてた?」「全然。親は違ったけど。どうして?」「ジョーを愛してるの。彼は人種の違いを気にしてて」「告白したの?」「分かるの」「彼のことを分かってないわね。人種は関係ない。チャーリーもあなたに恋してる。チャーリーは彼の親友で、あの二人は戦友で、堅い絆で結ばれてる」「ジョーが戸惑うのがよく分かったわ。チャーリーに私が直接言うわ」。
 チャーリー帰宅。「ジョーは?」「さあね。ふさぎこんでるよ」。マック「失礼、トイレへ」。クリス「ジョーと何かあったの?」「彼を傷つけてないか?」「私が人種の違いで傷つけたと?」。ジョー、クリスを抱き締めキスし「ごめん、クリス。疑って。お休み」とドアをバタンと閉める。マック「愛は戦いに似てるわ。誰かが血を流す」。
 剣道大会。「去年の優勝者同士の対戦からです。白人の有段者、チャーリー・バンクロフト巡査部長。(拍手)そして2世の有段者、ジョー・コジャック刑事。(拍手)」。2人は激しく打ちあう。しばらくして客「変だぞ」「反則だ!」「卑怯だぞ、コジャック!」。失神するチャーリー。
 ジョー「君に打ちこまれて思わずカッとなった」チャーリー「何が原因だ?」「クリスだ。愛してる。彼女も俺を。しかし友情に誓って指一本触れていない。何か言えよ。罵倒しろ」「結婚するのか?」「バカにしたな。日本人だと思って」「正気か?」「女を取られた腹いせに」「本気で言っているのか?」「そうに決まってる。俺への憎しみが顔に出てるぜ」。ジョー、去る。(明日へ続きます……)
 
 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。また、この2人について何らかの情報を知っている方も、以下のメールで情報をお送りください。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)

サミュエル・フラー監督『クリムゾン・キモノ』その1

2018-05-25 06:03:00 | ノンジャンル
 サミュエル・フラー監督・製作・脚本の’59年作品『クリムゾン・キモノ』をWOWOWシネマで見ました。
 着物姿の絵にクリスとサインする手。
 “ロサンゼルス”の字幕。夜の街を空撮。“大通り 午後8時”の字幕。“出演シュガー・トーチ”のネオン。ヌードショー。シュガーが楽屋に戻ると、中にいた男が発砲。シュガーは逃げるが、路上で射殺される。
 刑事のチャーリー「日本人の彼氏がいたのか?」シュガーのマネージャー「そんなこと知らない」「恨みを買っていた?」「いいかげんな女だったが好きだった」「犯人の顔を?」「ちらっとしか。危険を冒したくないからな」「誰と付き合っていた?」「私はただのマネージャーだ」「この日本絵は?」「全部シュガーのものだ。“紅の(クリムゾン)着物”ショーの研究資料だ。ベガス用のショー。舞台は置き屋。空手家が素手でレンガを割っている。シュガーから聞いた。空手家の名前は知らない。彼女のアパートで練習していた」「隠すから面倒なことに」「素晴らしいショーだったので口がすべったのだろう。芸者は紅の着物で客を迎える。あの絵のように。新しいシュガー・トーチの誕生だ。顔以外の肌は隠して日本の曲で踊る。空手家を挑発してゆっくり着物を脱ぐ。そこへサムライが乱入。剣道のヒダカだ。2人は決闘となる。素手 対 刀。空手家がヒダカを殺し、シュガーを見ると、死体にすがって泣いている。彼は激怒し、彼女を殺し、出て行く。そして幕。ロミオとジュリエット風だ」「クリスにはどこで会える?」「マックに会えば」。
 日系の刑事ジョー、剣道仲間のリチャードに出会い、「シュガーの友達がサムライ役に推薦してくれた」「共演はない。彼女は殺された」。
“258クラブ”の看板。女絵師のマックは酔っ払いながら壁画を描いている。「やあ、マック」「チャーリー、ビールを飲んで。シュガー・トーチが殺されたって? それもただ見客の前で。犯人の目撃は?」「ない。着物姿の絵を知らないか?」「若さがみなぎってる絵ね。色を混ぜないで紅一色で描いてる」「その天才画家はどこに?」。
 チャーリー「着物姿の絵を描いた画家は? 空手家の役者は?」男「どちらも韓国人のシュートだ」「住所は?」「さあ。彼は英語を話せない。日本語もヘタくそだ」。
 マック「画家の痴話げんかの果てに?」リチャード「たぶん」「壊れやすい友があんたのポケットに入ってるわね」「バーボンだ。クリスの居所は?」「酔ったら思い出すわ」。バーボンの瓶をマックに投げるチャーリー。
 ベッドで寝ているチャーリー。電話で起こされると「マック様からの通報よ」。
 チャーリー、ジョーに「クリスは大学で絵を教えてる」ジョー「俺はシュートを攻める。二人で解決しようぜ」。
 クリス「何か用? 残念ですけど今は仕事中よ」チャーリー「あなたがクリス? クリスティーン?」「そうよ。肖像画のご注文?」「いや、男だと思ってた」「では失礼」「ちょっと待って。私は刑事だ。新聞を?」「興味ないわ」「絵のデルのシュガーが昨晩撃ち殺された。犯人は君の絵と彼女の首を撃った。劇場の控室にあった絵だ。今はそれが唯一の手掛かりだ」「日本画家展でハンセル氏が注文したのよ。東洋の習慣に詳しかった。30代半ばで茶色の髪、茶色の目。シュガーの部屋で描いたわ。ハンセル氏も毎回来て。着物や帯は彼が用意してた」「ハンセルの似顔絵を。今すぐ」。似顔絵を描くクリスをうっとりと見詰めるチャーリー。
 ジョー「昨夜シュートを見た? 韓国人で山のような大男だ」色町の日本女性ら「ああ、あの怯えてた人かも」「吐いてたわ」「ヨシナガを呼んでた。すぐに引き取られてたわ」。
 チャーリー「日本人街は?」クリス「初めてよ」「今晩は2世パーティーがある。人形の展示や剣道の大会だ。シュガーの知人から絞り込んでいこう」。
 “エバーグリーン墓地”の看板。“殉国碑”にはアイゼンハワー将軍のサイン。“イタリア戦線を戦った勇敢な日系二世部隊を讃える クラーク将軍”の碑文。“ジョン・ヨシナガ上等兵 名誉勲章受章”の墓に参る父。ジョー「久しぶりです」ヨシナガ「シュート? 回復してるといいんだが。息子の法事があるのでその後に。9年連続で行っているので」。
 チャーリーとクリス、テレビを見ている。「警察からの臨時ニュースです。この男を捜索中」と言って、クリスの描いた似顔絵が映される。
 ジョー「シュートさん、シュガー・トーチさんの件でちょっと」。いきなりシュートは暴れ始め、ジョーを路上に叩きつけて、逃走。
 クリスは前科者の写真を見ていく。面通しもやる。
 マックにクリスを紹介するチャーリーとジョー。マック、クリスに「似顔絵のせいであなたはハンセルに殺される」。
 クリスに電話。「ハンセルだ。あの似顔絵があんたの最後の作品だ」。窓の外からクリスを狙った銃弾が放たれる。(明日へ続きます……)

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エドワード・ズウィック監督『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』

2018-05-24 06:00:00 | ノンジャンル
 エドワード・ズウィック監督・共同脚本、トム・クルーズ共同製作の’16年作品『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』をWOWOWシネマで見ました。
 パトカーのランプ。保安官助手「リーの店の前に救急車を2台寄越せ」。野次馬に「どうした? ひき逃げか?」「殴り合いだ。あっと言う間に1人で倒した。(レストランで背を向けてる男を指し)あいつだ」。
 保安官と助手、男(トム・クルーズ)に「手をあげて、こっちを向け」。
 保安官「陸軍のID。失効してる。住所はなし。ホームレスか。第2級の暴行罪だな。ミスター(IDカードを見て)ジャック・リーチャー。被害者が回復して証言すれば懲役10年から20年だな。郡拘置所にブチ込め」。ジャック「90秒以内に2つのことが起きる。まずあそこの電話が鳴る。次にお前が手錠姿でブチ込まれる」「突拍子もない予言だ」。電話が鳴りだす。電話に出る保安官に「MP(憲兵隊)よ。犯罪捜査部のターナー少佐」。ジャック「あんたと表の4人は軍の敷地内で犯罪行為を目撃した」「一体何の話だ?」「不法入国者の拉致と人身売買だ。MPが到着する前に、俺がお前を殺そうと思ってた」。MPの車2台が到着。保安官に手錠。
 ヒッチハイクで雨の中をトラックに乗せてもらうジャック。
 「はい、こちら第110憲兵隊、リーチ軍曹です」ジャック「ターナー少佐を」「お待ちを」「はい、ターナーです。そちらは」「ジャック・リーチャー。女性とは驚いた」「やっと声が聞けたわ。保安官の情報をどうも」「こっちこそ、この前ピンチから救ってくれた礼が」「軍人同士ですもの。少佐」「元少佐だ」「少佐は永久に少佐よ。そこは?」「テキサスのどこかだ。俺は流れ者」「あなたは我々のレジェンドよ。なぜ軍を去ったの?」「ある朝起きたら軍服が体に合わなくなってた」。
 「はい、第110憲兵隊、リーチ軍曹です」「ターナー少佐を」「お待ちを」「俺のオフィスに?」「あなたのデスクだったところよ。表面に凹みがあるのは、誰かの頭の跡だとか」「カッとなってね」「よく面倒を起こすと聞いてるわ」「あの時の礼に食事をおごろうか?」「今になってやっと誘うの? DCに現われるの?」「そのうち」「あてにせずに待つわ」「それだけ?」「会って好きになれるかと?」「難しい?」「どうかしら。扱いにくい女よ」「俺は平気さ」「覚悟しといて」。
 「リチャードだ。ターナー少佐を」「私が電話に出たリーチ軍曹です。少佐」「民間人だからリチャードだ」。
 「モーガン大佐だ。入ってくれ」「ターナー少佐に用が」「それは無理だ。彼女は解任された。逮捕され軍法会議待ちだ」「容疑は?」「スパイ容疑だ。私は一時的な後任だ。それで用は?」「個人的なことです」。ジャック、去る。
 リーチ「モーガン大佐の指示で口止めされてます。ターナー少佐は優秀なのに」ジャック「弁護官は?」「お教えできません」「訓練基地の君の教官は?」「グリーン軍曹です」「軍曹が起訴されたら君は誰に弁護を頼む?」「私なら重警備刑務所があるダイヤー基地のモアクロフト大佐に」。
 “ダイヤー基地にようこそ”の看板。ジャック「大佐、スーザン・ターナー少佐の弁護を? 私は元憲兵隊のリーチャーです」「現れると思ってた。ターナー少佐は君に面会許可を与えるなと」「理由は?」「君の履歴だ。反権威、反社会的、反弁護士、父親失格」「父親?」「教育費の不払いだ」「子供はいない」「キャンデス・ダトンという女性と言い分は違う。軍に支払いを求めてる。15歳のサマンサという娘の教育費だ」「間違いです」「母親には売春と薬物所持の逮捕歴がある。娘は里親にたらい回しにされていたようだ。(ジャック、サマンサの写真をひそかに奪う。)どう思う?」「つらいのが人生だ。子供はもちろん女の名も初耳だ。それより少佐のことを」「自宅から極秘情報を収めたハードドライブが見つかった。その情報を売っていた」「それだけ?」「タリバンとの写真も必要か?」「内部尋問の件で明日会う」「彼女が抗議すれば?」「君は弁護士か?」「敏腕で鳴らした弁護士も、時が経つと、年金待ちのタダの年寄りだ。軍服が泣いている」……。

 この後、ジャックは軍事産業のパラソース社の陰謀に気付き、ターナーを救出します。ターナーもパラソース社に騙されて、部下をアフガンに派遣させ、パラソース社の者に殺されていました。2人は警察とMPとパラソース社に雇われた殺し屋たちに追われながら、真実の究明に乗り出します。途中でパラソース社の殺し屋に襲われるも、命が助かった娘のサマンサと合流し、3人で行動し、最後には唯一生き延びた殺し屋とジャックとの対決となり、サマンサの機転もあって、ジャックはその対決に勝ちます。そして最後、サマンサは実の娘でないことが分かるのですが、サマンサとジャックの絆が新たに生まれるのでした。

 面白い映画だったと思います。

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秘書・藤江淳子が語る『うちの先生』その3

2018-05-23 05:22:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。

『先生と暮らした方々』
「うちの先生は、驚ろくほど自然体の人でした。色んな男性と暮らしたけれど、実際は、誰の影響も受けなかったんじゃないかと思います。(中略)それほど個性の強い、不思議な方です。
 そんな男性方とは、先生の場合一緒に暮らしている時よりも別々になってからの方が、かえって素晴らしい関係になるようです。北原先生とは、お互いに電話で小説を批評し合ったりして、私がそんなおふたりが素敵だなと思って見ていました。『君が今度書いた小説はここがこうで、これがいい』とか、言い合ったりして。
 東郷先生もよく外国からお葉書をくださったり、珍しいものを送ってくださいました。お葉書には「パリの凱旋門の前で待ち合わせて会いたいね」と書いてある。それを私が見てうらやまがっていたら、先生は『私がひとりでいると思ってこんな葉書をくれるのね』と言って笑っていました。
 いずれをとっても素敵な関係で、先生にとっておふたりは、同志のようなものだったのかもしれませんね。
 今でも、先生は誰が一番好きだったんでしょうと聞かれたことがありますが、私は、尾崎先生だったんじゃないかと思います。(中略)
 それと、うちの先生、言葉を色紙に書いたりするのが好きでしょう。あれは、尾崎先生の影響を受けてるんじゃないかと思います。たとえば『故郷(ふるさと)すなわち私である』という言葉、あれはうちの先生じゃなくて、尾崎先生の言葉なんですよ。だから、なんかそんな気がするんです。」

『ドストエフスキーと私の先生』
 文学のことは何もわからない私ですが、ドストエフスキーという文豪の名前と作品についは、なんだかとても身近なような気がしています。
 それと言うのも、先生がその人の作品の大変な愛読者で、ちょっと大げさに言いますと、家のあちらこちらにドストエフスキーの本が置いてあったからなんです。(中略)先生は文庫本を手近な時に手近なところにちょこっと置いておくのを習慣にしていらっしゃいました。
 その習慣は、東京の自宅に限ったことではなく、岩国のご生家でも、那須の家でも同じようにしていましたから、いつも先生のおそばにいる私まで、知らない間に『カラマーゾフの兄弟』とか『罪と罰』とかいう作品の名前を覚えてしまったというわけなのです。
 読書好きだった先生の思い出がもうひとつあります。先生は、岩国に帰郷される時や旅行される時、電車に乗り込んで座席に座ると、すぐに愛用の手提げ袋からそっと文庫本を取り出して、そのまま静かにずっと読みつづけていらっしゃいました。それもまた、ドストエフスキー。たまに他の人の作品で『クレーブの奥方』という時もありましたけど。
 あるとき、先生に『どうしてそんなにドストエフスキーがお好きなんですか?』とお聞きしたことがあります。『それはね、いつか私もこういう作品を書いてみたい、と願っているからなのよ』と先生は教えてくれました。
 時々、真夜中にベッドからむくっと起き上がって、先生は枕元においてあるメモ帳を引き寄せることがありました。隣で休んでいる私が『先生、何かいい言葉が浮かびましたか』と聞くと、『いい言葉を思いついたから、書きとめておくよ』と言いながら、先生はメモをしていらっしゃいました。
 深夜、先生の眠りをそのようにして破ったのは、いつかドストエフスキーのような作品を書きたいという先生の一念だったのだな、と今思ったりしています。」

『仕事が大好き』
「うちの先生にとって仕事をすることは、命の源だとおしゃっるくらいに大切なことでした。九十歳を過ぎて時々『あっちゃん、私もちょっと活きが悪くなってきたわね』と言うようになりました。それでもエネルギーを費やして、それから八年生きたんです。(中略)
 『人間は何でもできると思えば、できる。才能は情熱でカバーできる』というのが、先生の口癖でした。私自身、文学志望でもデザインの学校を出たわけでもないけれど、先生に付いて教えてもらっているうちに、気がついたら着物のデザインなどができるようになっていました。(中略)
 いくつになっても仕事をすることは素晴らしいことで、お金を稼ぐことは嫌らしいことでもなんでもない。衣食住を満たしてくれる大切なことだと考えていました。(中略)
 先生の口癖で、『いくら立派なことを書いても、読んでくれる人がいなけりゃ日記を書いてるのと同じじゃない。大根を売ってるおじちゃんにも、りんごを作ってるおばちゃんにも、読んで欲しいの』というのがありました。
 先生は、誰にでも分かる言葉でかくことを大切にしていたと思います。タイトルも『別れも愉快』とか『新しい仲』、『或る男の断面』、『生きて行く私』……。簡潔で分かりやすいけど、よく考えると深い。
上手いですよね。」

宇野千代さんの人柄がよく分かる文章でした。

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秘書・藤江淳子が語る『うちの先生』その2

2018-05-22 21:25:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
『お洒落をしないのは、泥棒よりもひどい』
「うちの先生は、お洒落や身だしなみは他人のためにするものだとお考えでした。接する相手に不快な思いをさせない、っていうことなんです。
 だから、近くまで来たからちょっと寄ってみた、なんていうお客様はいやがりました。せっかくいらしてくれたお客様は、きちんともてなさなくてはならないので。
 身だしなみといっても、厚化粧をするという意味じゃないんです。お化粧は顔を洗ってオリーブオイルを塗り、白粉をちょっとはたいて頬紅をすこし、眉を描いて口紅をつけておしまい。五分もあれば終わっちゃう。
 そんなごく簡単なお化粧なのに、突然人が来ると、たとえ親戚のような間柄の人でも、素顔のままでは絶対に『会わない』と言うんです。
 私にしてみれば、素顔でも全然おかしくないと思うのですが、先生は『恥ずかしいこと』と思い込んでいるんです。『お洒落しないのは、泥棒よりひどい』と、よく言っていました。
 でも、先生はお化粧を落とす時は時間がかかるんです。石けんとかにはこだわりませんでしたが、石けんを落とすのに、あきえるほどザブザブとすすいで落とすんです。
 そのせいか先生は、亡くなるまで皺という皺ができませんでした。『藤江さん、宇野先生の皺をいただいているんじゃないですか』なんて冗談を言う人がいるくらい(笑)。
 本人も書いていますが、『宇野千代は整形手術をしている』なんていう噂が流れたこともありました。でも先生は整形どころか、エステやマッサージにも、行ったことがありませんでした。
 それを聞いた先生は、事実無根の中傷に腹を立てるのではなく、「手術したように見えるくらい、皺がないってことね」と、むしろ自慢に思うようでした。
 不思議なくらい、プラス思考なんですよね。」

『小説よりも好きなもの』
「うちの先生の夢は、銀座でお弁当屋さんをやることでした。今はコンビニでもなんでも、お弁当を買うことが一般的になったでしょう。当時はまだお弁当屋さんが少なかった。先生はいつも時代に先がけて早すぎるんです(笑)。これは、叶うことのなかった夢です。
 お弁当からはじまるお付き合いも多かったようです。私も色んな方へ、先生の作ったお弁当を届けに行きました。
 よく一緒に食材を買いにも行きました。先生はどこででも買えるものが好き。買い物は、近所の魚屋、八百屋、ピーコックなどへ歩いて行きました。
 お料理の本を出していましたから、『だって、あっちゃん、みんなが買えるものを使っていなきゃだめじゃないの』と仰って。もちろん無理をしているんじゃなくて、先生にとってはそれが普通。
 らっきょうや奈良漬けを漬けるのが大好きで、もしかしたら小説を書くよりも好きだったかもしれません。来客があると、お茶うけにその漬物をお出しするくらい、自慢なの。
お客さんへのおもてなしでも、わざわざ遠出して高給な材料を買って、ということはやらない。やっぱり近所の八百屋さんで買った食材で、心をこめて料理するんです。
 先生は何度か結婚されていますが、その時々の相手に合わせてお酒の肴を作るのが楽しみなんです。だから、結婚している間は小説が少なくなるんです(笑)。
 それから、麻雀が大好き。『麻雀を知らない人はあわれだ』とか『性格がすぐ分かるから、うちの会社に入社させる人も麻雀で決めたい』とまで言っていたくらいです。
 麻雀を始めたら深夜一時二時までやって、その午後にはまたやってる。
 私があるとき『麻雀さえやらなければ、もっと小説が書けるのに』と言いましたら、『決してそういうことではない。麻雀があるから小説が書ける』と、エッセイに書かれちゃいました。」(また明日へ続きます……)

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