毎日新聞 2013年05月17日社説:敦賀原発2号機 廃炉の環境整備を急げ
原子力規制委員会の調査団が、日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)直下を「耐震設計上考慮すべき活断層」が走っていると認定した。原電は納得せず、現地調査を続けて再検討を求める方針だが、これまでの規制委の議論を踏まえれば、結論が覆る可能性は極めて低い。
原発の安全性を確保する立場から、調査団の結論を支持したい。規制委の島崎邦彦・委員長代理は「これま で事故がなかったのは幸いと言うしかない」と述べている。廃炉は不可避だ。敦賀2号機の建屋には、使用済み核燃料が保管されている。運転停止中でも、活断 層が動けば大事故につながる恐れがある。
規制委の調査団は昨年12月に現地調査を行い、直後に敦賀2号機直下の破砕帯(断層)を活断層とする見 解をまとめていた。しかし、原電側が「有識者の専門分野に偏りがある」「審議の進め方が一方的」などと反発。自民党や地元自治体からも、規制委に対し、調 査の徹底や議論の公正を求める声が出た。
このため、規制委は他の専門家からも意見を聞く会合を開き、原電が反論する場も設けて、意見を闘わせた。それでも、結論は変わらなかった。原電は「合理的な判断とは言えない」と主張するが、可能性を否定できなければ「活断層」とみなす規制委の姿勢は妥当だと考える。
廃炉の判断を下すのは原電だ。もちろんさまざまな影響が出る。
原電は原発専門の電力卸売会社で、大手電力9社などの出資で設立された。敦賀原発1、2号機と東海第2 原発(茨城県)の計3基を所有するが、老朽化や断層の存在、地元の反対などでいずれも再稼働のめどは立っていない。電力会社は原発の廃炉費用を積み立てて いるが、原電は3基の積み立てをまだ終えていない。廃炉は経営危機に直結する。
そうなれば、設立母体の電力会社は、原電の損失肩代わりなどの支援を迫られる。電気料金の上昇要因にもなる。原電と他社との統合や廃炉専業会社への転換など、経営形態の見直し議論も出てくるだろう。
原発立地に依存してきた地元自治体の財政や地域経済への影響も大きい。
敦賀2号機の設置を認可した国も責任を免れない。廃炉費用の負担のあり方の議論や、新たな地域振興策など、廃炉に向けた環境整備に着手する必要がある。
7月には原発の新規制基準が施行され、老朽化した原発も最新基準への適応が求められる。規制委による原発の活断層評価も続く。廃炉に追い込まれる原発がさらに出てくるはずだ。敦賀2号機の廃炉対策は、これからやってくる原発廃炉時代の試金石となるだろう。
「エネルギー計画」
口先だけ反省の「原発永久化」
安倍晋三政権が閣議決定した「エネルギー基本計画」は、いったん削除を決めた冒頭の東京電力福島第1原発事故への「反省」は復活させたものの、原発を「重要なベースロード電源」と位置づける立場は変えず、口先だけの反省で原発依存を続ける姿勢を露骨にしたものです。東日本大震災にともなう原発事故はいまだに収束のめどさえ立っていないのに、原発依存にのめりこむなど、被災者と国民の気持ちを踏みにじるものです。「エネルギー基本計画」ができたから といって、原発の再稼働や新増設、原発輸出などに突き進むのは絶対に許されません。
事故反省するなら廃止を
「エネルギー基本計画」は国のエネルギー政策の中長期的な指針です。東京電力福島原発事故は、原発が完全にコントロールできない未完成の技術であ り、いったん事故が起きれば長期にわたって広範囲に、予想もつかない被害を及ぼすことを証明しました。事故から3年余り、いまだに事故は収束せず、日本国 内に稼働中の原発は1基もありません。原発事故を真剣に反省するなら、原発は直ちに廃止し、原発に依存しないエネルギー政策を確立すべきです。
民主党政権が「2030年代原発稼働ゼロ」を打ち出そうとし、安倍政権でも当初「原子力に依存しない社会をめざす」と主張したのは、原発事故の深 刻さを踏まえれば当然です。ところが民主党政権では閣議決定に至らず、安倍政権では後退に後退を重ねて原発依存を露骨に打ち出しました。新しい「エネル ギー基本計画」はまさに反省なき「原発永久化」宣言ともいうべきものです。
2月下旬政府がまとめた「計画」の原案には福島原発事故について、「政府及び原子力事業者は、いわゆる『安全神話』に陥り、十分な過酷事故への対 応ができず、このような悲惨な事態を防げなかったことへの深い反省を一時たりとも失念してはならない」とありました。この部分を削除しようとし、国民の批 判をあびたのは、新たな「安全神話」の本音の表れといわれても仕方がありません。
原発を「重要なベースロード電源」と位置づけたのは、現在停止中の原発の再稼働を狙うだけでなく、原発の新増設さえ可能にし、長期にわたり原発依 存を続けようということなのか。「計画」には使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理や、プルトニウムをウランと混ぜて燃やすプルサーマル発電も 「推進」をうたいました。運転のめどが立たない高速増殖炉「もんじゅ」についてさえ「国際的な研究拠点」との位置づけです。福島原発事故の反省がまったく 見られないのは明らかです。
「再生」目標も明示せず
「計画」は原発を安価で安定的な「ベースロード電源」としていますが、いったん事故を起こした場合の費用や廃炉の費用などを計算に入れれば、原発 が決して「安価」でも「安定的」でもないのは明らかです。福島原発事故の後、原発依存をやめ、太陽光、風力など再生可能な自然エネルギーに転換することが 世界の流れです。「計画」には再生可能エネルギーの目標さえ明示がありません。
「計画」の強行を許さず撤回を求め、原発の廃止、自然エネルギーへの転換を進めるうえで国民の世論と運動がいよいよ必要です。
原発推進のエネ計画閣議決定
列島、終日怒りの行動 私も11日官邸前にいました。
![]() (写真)政府のエネルギー基本計画閣議決定に抗議の声をあげる人たち=11日、首相官邸前 |
安倍内閣がエネルギー基本計画を閣議決定した11日、福島、北海道、静岡、福井など原発立地県をはじめ、列島各地で抗議デモや原発ゼロを求める署名など多彩な行動が繰り広げられました。
東京では、首都圏反原発連合(反原連)が首相官邸前で昼と夜に抗議行動をおこないました。他の市民団体による抗議行動も朝からおこなわれ、官邸前は終日、「原発ゼロを撤回するな」「再稼働反対」とコールが響きました。
反原連の緊急抗議行動では「国民の声を聞け!」「川内原発 再稼働反対」などのプラカードが林立。ミサオ・レッドウルフさんは「私たちが声を出さ ないと決定を認めたことになる。怒りを安倍首相たちに見せつけていきましょう」と呼びかけました。夜の抗議行動には3000人(主催者発表)が参加しまし た。
官邸前行動に2回目から参加している女性(68)=川崎市=は「福島第1原発事故を経験した日本が、原発に依存するなど許されない。原発を基本に据えたエネルギー基本計画は間違っている。今動いている原発はありません。原発をなくす決断をすべきです」と語りました。
日本共産党の笠井亮衆院議員、吉良よし子参院議員が参加し、スピーチしました。