2025年1月15日(水)
しんぶん赤旗主張
電力価格つり上げ
公正な電力市場の確立は急務
本文と写真は無関係です。
電気料金を含む物価高騰が家庭や事業所を直撃するなか、日本の発電能力の3割を占める国内最大の発電会社JERA(東京電力グループと中部電力が共同出資)が、意図的に電力価格をつり上げていました。国民生活に大きな打撃を与えるもので許されません。
経済産業相直属の電力・ガス取引監視等委員会(電取委)は昨年11月、JERAが少なくとも2019年4月から23年10月までの4年半にわたり、発電事業者と電力の小売会社が売買取引を行う卸電力市場で、電力を供給する余力があり、取引相場を変動させる認識を持っていたにもかかわらず、売り惜しみによる相場操縦を行っていたと判断。JERAに業務改善勧告を行い、改善措置と計画の報告を求めました。
■巨額不当利益得る
日本共産党の岩渕友参議院議員の電取委への聞き取りで、売り惜しみによる供給量の減少により電力市場で電力価格が高騰し、同社が最大で1日1億円以上の利益を不当に得ていたことや、影響の大きかった3日間で買い手の小売会社に40億円以上を不必要に支払わせたことが、初めて明らかになりました。
公正取引委員会と経産省が定めた「適正な電力取引についての指針」では、市場支配力を有する可能性が高い事業者は、余剰電力の全量を限界費用(発電に必要な燃料費等)に基づく価格で入札することを強く求めています。今回のJERAによる相場操縦は、適正な電力価格の形成を妨げ、競争力の弱い新電力の電力調達を困難にさせるもので、電力市場を根幹から揺るがす重大問題です。
電取委による勧告に対してJERAは昨年12月に出した報告書で「利益を享受する目的で相場操縦する意図は無かった」と主張。再生可能エネルギーを扱う小売事業者や市民団体から、徹底した調査と不当な収入の返還や罰則を科すことなどを求める声が上がっているのは当然です。
電取委は報告書は不十分だとして、同社に対し3月末までに追加報告を出すよう要請しています。徹底した検証が必要です。
■大手の独占規制を
欧米では、電力市場を監視する機関は刑事罰や罰金を科す強い権限を有しています。EUでは相場操縦に対する査察が数多く実施され、違反者に罰金を科す事案も増加し数十億円の罰金を科した例もあります。
日本では、電気料金の抑制、電力会社の選択の自由を目的とした「電力自由化」(16年)以降も、大手電力会社が圧倒的な市場支配力を有する寡占状態のままです。大手電力をめぐっては、これまでに顧客情報の不正閲覧、事業者用電気の販売をめぐるカルテルなど数々の不正行為が発覚しています。こうしたもとで、新電力会社が経営困難に陥り撤退・倒産が相次ぎました。
電力は、水道やガスと同様に日々の暮らし、経済活動を支える不可欠の公共インフラであり、電力の取引市場には高い透明性、公益性が求められています。
電取委を公正取引委員会のように強い権限を持つ独立した規制機関にするとともに、大手電力の発電部門と販売部門の完全分離など独占の規制が急務です。