【社説】尹大統領弾劾案の圧倒的可決で民主主義の力を示すべき
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾訴追案が7日午後、国会本会議に上程される。国会は反民主・反憲法・反歴史的犯罪を犯した尹大統領弾劾案を圧倒的に可決させ、尹氏を憲法裁判所の審判台に送らなければならない。
民主化後、韓国で大統領弾劾訴追案が国会本会議に上程されるのは、2004年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領、2016年の朴槿恵(パク・クネ)大統領に続き今回で3回目。20年間のあいだに大統領弾劾が3度も繰り返されるのは悲劇だ。しかし、尹大統領が犯した12・3内乱は全国民の名前で厳重な責任を問わざるを得ない事案だ。
「共に民主党」など野党6党の議員191人が発議した尹大統領弾劾案は、要件も手続きも満たしていない非常戒厳を宣布し、民主主義の時計を40年余り前に巻き戻した尹大統領の違憲と違法の責任を問う内容だ。憲法第77条第1項における戒厳の要件は「戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態」だが、韓国の状況がこれに当たると考える人はいない。特に、尹大統領は憲法上戒厳解除を要求できる唯一の機関である国会に武装軍人を投入し、国会と政党活動を封鎖しようとした。多くの法律家たちがこれは明白な違憲と違法の内乱に当たるとし、弾劾は避けられないと語る。
非常戒厳解除後に相次いで出てきた関係者らの証言は、尹大統領を直ちに弾劾しなければならない理由をより明確にする。国家情報院のホン・ジャンウォン第1次長は6日、国会に出席し、尹大統領が3日夜の非常戒厳宣言直後に電話をかけてきて「この機に全員を捕まえろ」とし、防諜司令部に協力するよう指示したと暴露した。逮捕対象者はウ・ウォンシク国会議長、与党「国民の力」のハン・ドンフン代表、民主党のイ・ジェミョン代表とパク・チャンデ院内代表、キム・ミンソク首席最高委員、チョン・チョンレ議員、祖国革新党のチョ・グク代表などだったという。国会と政党を完全に抑え込もうとしたのだ。キム・ミョンス前最高裁長官、クォン・スニル前最高裁判事、ユーチューバーのキム・オジュン氏も含まれた。
尹大統領はまた、クァク・チョングン特殊戦司令官とイ・ジヌ首都防衛司令官に電話をかけ、「707特殊任務団がどこまで移動しているのか」、「そこの状況はどうか」と状況を直接確認したという当事者の証言も出てきた。
憲法機関である国会と主要な政治家を軍と警察を動員して無力化しようとしたにもかかわらず、尹大統領は謝罪どころか「野党に対する警告」だったとし、自分には非がないと与党指導部に主張した。大統領室はさらに海外メディアに「国民生活の被害を最小化するために午後10時半に(戒厳令を宣布)した」とか、「アクションはしたが、合憲的な枠組みの中で行った」などと詭弁をならべた。民主主義の概念が全くなく、無能、非道であるうえ、卑怯である尹大統領を執務室に一日たりとも留まらせてはならない。
国民の力が弾劾反対を党方針に決めた中で、ハン・ドンフン代表が弾劾賛成の立場を明らかにしたのは幸いなことだ。ハン代表は5日、「戒厳は違憲的だが、準備のない混乱による国民と支持者たちの被害を防ぐため、今回の弾劾は可決されないよう努める」と述べた。しかし6日、尹大統領が政治家たちを京畿道果川(クァチョン)の収監場所に収監しようとした具体的な計画を把握したとし、「早急な職務執行停止が必要だ」と述べた。ハン代表は「尹大統領が大統領職を引き続き遂行した場合、今回の非常戒厳のような極端な行動が再現される危険性が高い」と語った。まったくもってその通りだ。尹大統領は弾劾の危機に追い込まれると、同日午後、ハン代表を急いで呼んで危機を免れようとしたが、ハン代表は「大統領から私の判断を覆すほどの話は聞いていない」とし、弾劾不可避論を再確認した。
カギは弾劾案可決に必要な200票(在籍議員の3分の2)を満たせるよう、国民の力から8票以上の賛成票が出るかどうかだ。ハン・ドンフン代表の弾劾賛成の立場表明により、与党内の親ハン・ドンフン派など一部が弾劾賛成に合流する可能性が高まった。しかし、親尹錫悦派と重鎮議員たちは、「尹大統領を弾劾すれば保守が壊滅し、来年行われる早期大統領選挙をイ・ジェミョン代表に差し出すことになる」と反対している。このような悩みは、親ハン・ドンフン派の内部でも同じだ。
しかし、尹大統領の内乱行為の前で、弾劾後に有利か不利かを考えるのは、国民に罪を犯すことに他ならない。明白な憲政蹂躙(じゅうりん)に対し、政治的理由をつけて弾劾案を否決させるなら、後世に合わせる顔がない。国民の力は、親尹錫悦派か、親ハン・ドンフン派か、首都圏か、慶尚南道かにかかわらず、大韓民国の民主主義がかかった重大な決定の前で、歴史に恥じない選択をしなければならない。今は弾劾後に何が起こるかよりも、今後何をするか分からない爆発物のような尹大統領の職務を停止させ、国家を危機から救い、国民を安心させなければならない。この状況で早期大統領選挙の混乱を防ぐためと主張し、任期短縮、改憲など「秩序ある退陣」を掲げて時間稼ぎをするのは欺瞞だ。尹大統領が職務を遂行し続ければ、対立と混乱を増大させるだけだ。
韓国国民だけでなく世界中が、大韓民国で3日夜に非常戒厳が宣布されたことに驚いた。そして、与野党議員190人が武装兵力の妨害を突破して全会一致で戒厳解除決議案を可決し、6時間で正常化させたことに再び驚いた。今や国民と世界が7日に行われる国会の選択を見守っている。憲法を蹂躙した大統領にいかなる責任も問わないのは、民主主義国家ではありえないことだ。民主主義の破壊者の末路がどのような姿になるのか、歴史に明確に残さなければならない。国会は、内乱首魁尹大統領の弾劾案を圧倒的な賛成で可決し、大韓民国の民主主義の力を示さなければならない。そのカギを握る与党議員たちは、左顧右眄(右を振り向いたり、左を見たりして気を配ること。転じて辺りの様子を気にして決断しないこと)せず、尹大統領の弾劾を求める国民の声にきちんと応えなければならない。