「戒厳の黒幕」元情報司令官、進級をちらつかせ戒厳軍を掌握
12・3非常戒厳を企画した一人とされるノ・サンウォン元情報司令官が、将官や佐官級の将校たちにキム・ヨンヒョン前国防部長官との親交を誇示し、進級時に影響力を行使できると言って接近したことが分かった。予備役の民間人であるにもかかわらず、ノ元司令官が戒厳当時、現役の情報司令部要員を陣頭指揮できたのもそのためだったことが明らかになった。
18日のハンギョレ取材の結果、ノ元司令官は非常戒厳宣布の数カ月前から、進級を媒介に現役の情報司令部の要員などに接近していたことが確認された。ムン・サンホ前情報司令官は昨年の検察での取調べで「2024年11月末に将官人事があったが、キム・ボンギュ大佐は今年(2024年)が将官になる適期であり、チョン・ソンウク大佐は2年後が将官への進級対象だった。ノ元司令官が私を通さずに2人に進級をエサに(戒厳関連任務を)指示した」と供述したという。情報司所属のキム・ボンギュ大佐ととチョン・ソンウク大佐は戒厳2日前、京畿道安山(アンサン)のロッテリアで、ノ元司令官と選管委の掌握などを事前に謀議したという疑いが持たれている。ムン前司令官はまた、ノ元司令官が自身にも「次は合同参謀本部の情報本部に行くべきではないか、と言ってきた」というなど、進級に影響力を行使できるという趣旨の発言もしたという。ただし、ムン前司令官は「あえてそのようなポストに行きたいと思わなかったため、耳を貸さなかった」とし、これといった対応をしなかったという趣旨で陳述したという。
チョン大佐は自身がノ元司令官の「進級のエサ」に釣られたことを認めた。チョン大佐は「ノ元司令官が数回にわたり進級の話を持ち出し『私が口添えしてあげる』と言いながら、自分に仕事をさせた」とし、「進級したいという欲が出て、指示に従わざるを得なかった」と陳述したという。チョン大佐は昨年6月、情報司機密流出事件で職務排除命令を受けるなど、今後の進級が難しい可能性がある状況だった。キム大佐もノ元司令官から「私が旅団長になり、チョン・ソンウク情報司令部大佐が(後任の)旅団長になってほしい、(進級のため)努力してみる」と言われたとし、「当時は単なる励ましの言葉だと思った」という趣旨で供述したという。ノ元司令官はキム前長官が国防部長官に任命された後から「龍山(ヨンサン=大統領室)に行ってきた」と言うなど、キム前長官との親交を強調してきたという。
ノ元司令官は戒厳が維持された場合、「第2捜査団」の団長に内定したク・サムフェ陸軍2機甲旅団長にも進級を媒介に接近した。ノ元司令官は昨年3~4月、ク旅団長が3次進級審査に落ちると、9年ぶりに連絡してきて「お前がなぜ進級できないのか調べてみる」としたうえで、「進級できない理由はパワハラ」だとし、積極的に疎明すると提案した。昨年9月、キム前長官が就任してからは、連絡の回数はさらに増えた。ノ元司令官は「私が積極的に釈明し、長官に推薦する」と提案したが、昨年10月には「大統領室の公職綱紀(秘書官側)でお前の資料を握って(進級を)止めている。5枚(500万ウォン)だけ用意して送れ」と要求した。ク旅団長は悩んだ末にノ元前司令官の要求に応じたが、結局進級には失敗した。ク旅団長は「ノ元司令官が私にこのようなことをさせて、身動きが取れないようにしたのではないか疑わしい」とし、「私を切迫な状況に追い込もうとしたようだ」という趣旨で検察に陳述したという。