「君が代」訴訟
停職・減給取り消し
最高裁 「裁量権の逸脱」
(写真)一部処分の取り消し判決を受け「都教委の暴走に歯止め」などの旗を掲げる原告ら=16日、最高裁前
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卒業式などで「君が代」起立斉唱やピアノ伴奏の職務命令に反したとして懲戒処分を受けた東京都の公立学校教職員ら計約170人が、都などを相手に 処分の取り消しなどを求めた3件の訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は16日、停職処分を受けた1人と減給処分を受けた1人について、 処分を取り消す判決を出しました。不起立をくり返すたびに重くなる処分に一定の歯止めをかけたものです。
判決は職務命令に反した不起立などの行為について「動機・原因は個人の歴史観・世界観等に起因するものであり、行為の性質・態様は積極的な妨害等 ではなく、物理的に式次第の遂行を妨げるものではない」と指摘。「減給以上の処分を選択することについては、慎重な考慮が必要となる」としました。
そのうえで、不起立を4回繰り返した原告への停職1カ月の処分を「重きに失し、裁量権の範囲を超えて違法」と判断。損害賠償については高裁へ差し 戻しました。また、過去に入学式での服装を巡って職務命令に反したとして戒告処分を受け、その後、不起立で減給1カ月となった原告への処分を同様に取り消 しました。
一方、過去に「日の丸」を引き降ろすなどで5回の懲戒処分を受け、不起立で停職3カ月になった原告については、「処分は妥当を欠くものとはいえない」としました。さらに、戒告処分の取り消しを求めた168人の請求を退けました。
判決は5人の裁判官のうち4人の多数意見。宮川光治裁判官は、「不起立行為に対しては、戒告であっても懲戒処分を科すことは重きに過ぎ、社会通念上著しく妥当性を欠く」とし、懲戒処分はすべて裁量権の逸脱・乱用で違法だとする反対意見をのべました。
大阪条例案に影響
大阪市の橋下徹市長が率いる「大阪維新の会」は、職務命令に従わない職員を免職の対象にするとした条例案を府議会に提出しており、判決はこうした動きにも影響を与える可能性があります。
「教育の自由取り返す」
「君が代」訴訟 原告ら決意
最高裁判決
東京都の公立学校教職員への「日の丸・君が代」強制をめぐる最高裁判決を受けて16日、それぞれの原告らが都内で記者会見をしました。
停職処分を取り消された原告は「処分に一定の歯止めをかけられたことは、現場の教師に何か力になるのではないか」と語りました。
減給処分を取り消された原告(61)は「昨年3月の高裁判決をみんなで勝ち取った力が今回の勝利につながった。子どもたちや保護者、私たちの手に 教育の自由を取り返すまで頑張りたい」。戒告処分の取り消しが認められなかった原告の一人(67)は「(不起立などを繰り返すことで処分が重くなる)累積 処分が許されないとされたことは評価したい。10・23通達をなくすまで私たちはあきらめません」と決意を語りました。
原告側弁護団の雪竹奈緒弁護士は「処分を重ねて悩んでいる教員にとって大きな力になる判決だった。余裕がなく病気になる教員がたくさんいる教育現 場を変えるために判決の意味は大きい」と話しました。澤藤統一郎弁護士は「教員に思想の転向を強要するシステムである10・23通達に歯止めがかかった。 都の教育行政に大きな打撃を与え、大阪の条例案の破たんを示すものだ」と話しました。
解説
処分の重度化に歯止め
「君が代」起立斉唱の職務命令に反した教職員への処分をめぐる16日の最高裁判決は、不起立を繰り返すたびに処分を重くしてきた東京都教育委員会のやり方に一定の歯止めをかけたものといえます。
都教委は2003年に「日の丸・君が代」を強制する通達(10・23通達)を出して以来、1回目の不起立では戒告、2、3回目は減給、4回目以降は停職と、懲戒処分をどんどん重くする方針をとってきました。
最高裁判決は、「減給以上の処分については、事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要」「減給処分について相当性を基礎付ける具体的事情が認められるためには、過去1回の不起立行為等による処分歴があることのみをもっては足りない」と判断しました。
事実上、都教委の処分方針を不当なものと認定したことになります。
「大阪維新の会」の「教育基本条例案」は、教職員が職務命令に2回違反すれば停職、同じ命令に3回違反すれば免職にすると規定しています。今回の最高裁判決に従えば、この規定も違法なものとなります。
一方、最高裁はこれまで、10・23通達とそれに基づいた各校長の起立命令自体については、原告側の違憲との主張にもかかわらず、「合憲」として きました。今回の判決も、その点は踏襲しています。不起立を理由に退職後の再雇用の取り消しや拒否をされたケースも最高裁は容認しており、今回の処分取り 消しとの矛盾も出ています。(高間史人)
君が代処分:大阪府の松井知事 基準見直しの方針示す
2012年1月17日 22時48分 更新:1月17日 23時44分
大阪府の松井一郎知事=大西岳彦撮影
君が代を起立斉唱しなかった教職員の処分を巡る最高裁判決を受け、大阪府の松井一郎知事は17日の記者会見で、教育基本条例案と職員基本条例案の 職務命令違反での処分基準を修正する方針を明らかにした。現行の両条例案では職員・教職員について初回の違反で「減給または戒告」、2回目で「停職」との 基準を示していたが、16日の最高裁の「減給と停職は慎重な考慮が必要」との判断を踏まえて初回は「戒告」にとどめ、2回目は「減給」と軽減する。
一方で松井知事は両条例案に盛り込んだ「同一命令への違反3回で分限免職」との規定については「(3回の違反は)公務員としての資質を著しく欠く」として堅持する方針を示した。
最高裁判決について「厳しすぎる処分はだめということ。職を奪うには権力側もそれ相応の配慮をし、段階を踏んで決めていかないといけない」と強 調。処分基準を見直し、初回の違反への処分として盛り込んでいた減給は行わない方針を示した。さらに条例案では2回目の違反で義務づけられる指導研修を初 回の違反から義務づけ、さらに違反を繰り返さない旨の誓約書の提出もその都度求める方針を明らかにした。
2回目の違反に対する処分として示した「停職」については今後、条例案に盛り込むかどうか検討するという。
また橋下徹・大阪市長は17日、教育基本条例案で「首長が設定する」としていた教育目標の条文を「予算執行にあたり首長が教育目標を設定する」と の文言に変更する方針を明らかにした。文部科学省は首長による教育目標設定は違法との見解を示している。橋下市長は「地方教育行政法では予算執行の権限は 首長にある」とし、この文言を入れることで違法性はなくなると主張した。【堀文彦、林由紀子】
知事もわかっていない、更に問題があるのは橋下氏
文章の内容ではない、一応、橋下氏の肩書きが「法律家?」と言われているのなら、「首長が教育行政の根本に介入してはならない」という、法の主旨をゆがめてはならない。
ごまかし・だまし・ごり押し・脅かしはゆるされない。 彼は小手先で根本をかえられるとでもおもっているのだろうか? 小手先いじりのために頭を使うより、まず根本を理解せよ。と言いたい。