またひとつ 私の周りが動く

髪を切りに行った

座った途端に　はい　と折りたたまれた紙を渡された

広げてみると　店舗移転のお知らせ

えぇぇぇ～～～～～


この町で修行をし　この町で自分の店を持ち続けてきたことは比較的最近になって知った

私がここに通うようになってから２０年ほどになるだろうか

それが何時だったかは記憶に無いのだが　都会の美容室に行くのが面倒になって　地元のお店を探した時からになる

沢山ある店の中からここを選んだのは　ディスプレーにスポーツタイプの自転車が飾ってあったから　という程度か

それに　ここで長く開業していることは知っていた

団塊の世代のマスターと息子ほどの若い男性との二人に　時々手伝いに来る女性スタッフが一人

若いスタッフが大勢いて　会話をするのにも閉口するようなお店では無いところが気に入って　以来ずっと通ってきた

最近になって　引退も考えるけれど古いお得意さんが多くて　申し訳無くてやめられないのだとマスターが話してくれた


彼が独立するんです

ああ　そういうことなのね

おめでとうございます　と若者に声をかける

もうかなり前からこの話は出ていただろうが　全てが決まるまで言わずにいたのだろうと思いつつ地図を見ると　今までの倍ほどの距離を歩かなければならず　しかも駅から離れた住宅地だ

駅の近くでは家賃も高くなるし　この際　店の規模も小さくしていくつもりなのだろう

遠くなるなあ～とはっきり言うと　電車やバスに乗ってくる人もいる中で　歩いて行ける距離の私に遠いと言われるなんてと　苦笑いをされた

色々な方面から来られる客に渡そうと　手書きのバスの時刻表を何種類も用意しているのを見て　顧客を大事に思っていることがよくわかった　

来年１月１３日の開店も　なんとかその日にお願いしたいとお客さんに頼まれてのことらしい

またひとつ　私の周りが少し動く

私もそれに連れて動き　また新しい景色を楽しんでいこう