1月8日、かみのやま温泉有馬館で山友会の新年会があった。参加した会員19名、今年の登山計画を確認して、大いに盛り上がった。今年のメインになる山行は、雲の平への5泊の計画である。この周りには、盟主の黒部五郎岳のほか鷲羽岳、水晶岳の3000m級の三つの百名山が含まれている。後期高齢者の年齢に近づいて、もうこの山に挑むのは最後のチャンスであろう。天候に恵まれた最高の山行を実現するため、今から体造りを進めて行く。
深田久弥は『日本百名山』で黒部五郎岳の魅力を、達意な文体で語っている。その一節を引くと
「私も黒部五郎は大好きな山である。これほど独自の個性を持った山も稀である。雲の平から見た姿が中でも立派で中村さんの表現を借りれば、「得意な円錐がどっしりと、高原を圧し、頂上のカールは大口を開けて、雪の白歯を光らせている。」
その景観に魅せられて、この名山へ、仲間を誘ったのは、わが会のTさんである。自らもこの光景に再び会いたいと同時に、仲間にも見せたいとのことであった。酒を酌みながら、雲の平への山行の計画が深夜まで語られた。メンバーを厳選すること、山行では各自が心を合わせること、これまでの山行の経験を余すことなく生かさなければならない、いつまでも話は尽きない。
深田久弥が引いた、中村さんとは、黒部五郎岳に魅せられた中村清太郎画伯のことである。小島烏水の『日本アルプス』には、中村画伯の「信飛越境上の郡嶺」図が収められている。アルプスの名山に囲まれた雲の平の図は、現場に身を置いたときの想像を逞しくしてくれる。小島烏水の名文を引いてみる。
「雲の平」高原は、見わたす限り、偃松と草の原で、草原の中に偃松が、アフリカの砂漠にでもありそうな覇王樹のように円く塊まって蒼黯くなっている、また長く繋がって、一度足を入れると、何処まで迷うか解らないように繁茂している、その間の原には、イワウメ、ツガザクラ、白山一華などが、土の色も見せないように敷かれている、そうして大きな石が寝たり起きたりして、遠くから見ると、牛が野放しに飼ってあるのかとも間違えられる、五郎岳、赤城岳、薬師岳、赤岳などの高山で、前後を取り囲まれて、それらの山の頭で冷却した水蒸気が、この森林に屯しては、雲や霧となって、ふわふわと立ち昇るので、何のことはない、雲の遊び場と言ったようなこころだ」
はたして、このようなすばらしい異郷への挑戦が実現できるか、実は率直に心もとない。そのためにも生活の質を高めてなければならない。暴飲暴食を避けて、適度な運動で身体を締め、しかも足には長時間の山歩きが可能な筋肉をつけなければならない。だが、計画を実現するためにの苦労には、心を若返らせる、身体にいいこともたくさんある。
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