三才女の3番に登場するのは、伊勢大輔である。大輔は代々歌詠みの家に生まれ、見込まれて藤原道長の娘で、一条天皇の中宮彰子に仕えることになった。大輔がどのような歌を詠むのかと、道長をはじめ、人々の注目を集めていた。
きさいの宮の仰言 御声のもとに 古の
奈良の都の八重桜
今日九重ににほひぬと
つかうまつりし 言の葉は
花は千歳も 散らざらん
大輔が宮に仕えて間もないころ、ある人が中宮の御前に八重桜の枝を献上した。そこには、たまたま道長公も居合わせていた。道長公は硯と紙を差し出し、「この花を見て歌詠め」仰せられた。
いにしへの 奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな 伊勢大輔
大輔は、あわてる様子もなく、硯に墨をすり、さらさらとこの歌をよどむことなく書いて差し出した。八重に続けて九重としたのは、宮中をめでるみごとな歌になった。「宮中鼓動す」とものの本に、居合わせた人々の感動の様子を伝えている。
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