農作業をしていると、カッコウの鳴く声が聞こえる季節である。気温が上がってカッコウの鳴き声を聞くと、体中にけだるさを感じる。体がまだ暑さに馴れないせいか知らんと思ったりする。
うき我をさびしがらせよかんこ鳥 芭蕉
芭蕉が詠んだかんこ鳥は、カッコウのことである。旅中、山道でこの声を聞いたのであろう。住み慣れた場所を離れたときにこんな句が生まれた。元禄4年、芭蕉48歳の時の句である。この年、芭蕉は京都の向井去来の落柿舎に滞在し、嵯峨日記を書いた。そのなかにこの句は見える。同じ発想の句に
うきわれをさびしがらせよ秋の寺 芭蕉
というのがある。これは元禄2年、伊勢の国長島大智院に寄宿したときの句作である。