東日本の上空に寒気が入り、地上で気温が高いため、各地で雷や突風、竜巻、豪雨といった現象が起きている。すぐ上の空に稲妻が縦に走り、ほどなく大きな雷鳴になると、幾度となく経験していても恐怖を覚える。
伊香保嶺に雷な鳴りそねわが上には故はなけども子らによりてぞ 万葉集3421
男にとっても雷は気持ちのよいものではないが、女性やこどもたちにとっては、大きな恐怖の対象になる。この歌は相聞歌で、気象に寄せて男の心を述べている。雷鳴ぐらいでは、俺は妨げられはしない。いくらでもあの子に会いに行くのだが、先方の子が怖れて出てこないかも知れないから、鳴らないでくれ、というほどの意味である。
この歌で雷と書いて神と読む。虎、狼など猛獣も同じく神と呼ばれた。この時代、人間の力の及ばないもの、威力のあるもの、恐ろしいものさして神と呼ばれていた。
古代の人々は、この恐ろしいものにどのように対処したのであろうか。それは、神を喜ばせるために祀ることを一番に考えた。山海の珍味を捧げ、酒を差し出した。祭りには、豊作の祈願と感謝をあらわすために神社を建て、祭りが行われた。