雪がしんしんと降る。まだ平地に積もるほどでないが、千歳山が雪化粧をした。天明18年、山形を訪れた古川古松軒が書いた『東遊雑記』に、この千歳山に触れた記事がある。
「この町より千とせ山見ゆ、風景よし。この山に名高きあこやの松あり、これは幾度も植え次ぎし松ながら、遠見大樹に思わるるなり。麓に万松寺という禅院あり。大寺にはあらざれども、古き所にてもっとも殊勝なり。(中略)この千とせ山風景甚だ奇妙なり。」
と述べ、千歳山の景色をしきりに称賛している。事実、山形駅を降り立ち、東正面を望めば、この山の端正な姿が目に飛び込んでくる。しかし一年を通して千歳山が一番美しいのは、松に雪を戴いた姿である。松くい虫のために、松は次々と倒されて、いまかって松山と呼ばれた風貌は様相を変えているが、なお目に焼き付く景色である。