もう石炭ストーブを使っている家庭はないだろうが、昭和40年代まで北海道では鉄製の石炭ストーブを使っていた。このストーブを初めて北海道で紹介したのは、あのクラーク博士である。「少年よ大志を抱け」とい言葉で、いまなおクラーク博士の言葉が残っているが、博士の紹介したストーブは、かのベンジャミン・フランクリンの発明によるものだ。不燃状態のときに出るガスを有効利用して燃焼効率を高めたもので、凍てつく北海道の冬にうってつけのものであった。
多くの炭鉱をかかえ、良質の石炭を産出する北海道ではまたたく間に、全道へ広がった。開拓農民であった私の家でも、当然のことにこのストーブを使っていた。燃料として薪を使う家庭もあったが、黒光りする石炭を一冬分買って、小屋に積み上げておくのは、冬を越す一家を励ます光景であった。隙間風が吹き込んでくる粗末な家では、家族がストーブを囲んで暖を取れることは何よりもまして必要なものであった。
フランクリンは雷雲に帯電を発明したことで知られるが、このフランクリンストーブをはじめ、遠近両用メガネ、グラス・ハーモニカなども発明した。因みにフランクリンが生まれたのは、1706年1月17日である。