今冬はじめて雪らしい雪になった。普段は無口な宅配便のお兄ちゃんも、「雪でびしょびしょ」とこぼしながら、荷物を配達していった。昨夜は20㎝弱だったらしいが、今夜から明日、あさってにかけて、さらに積雪が増える予報である。まったく雪がない冬など考えられないから、少し交通の不便は我慢して、雪が山や畑に積もるのを待ちたい。
雪降れり時間の束の降るごとく 石田 波郷
時間の束などという言葉はふだん使わないし、難解に思われるが、100m先も雪雲に覆われて見えないと、目に見えない先がひょっとして時間の束なのか、そんな想像もしてみたくなる。道路には人影も見えず、渋滞した車の列が、ゆっくりと通り過ぎる。
雪の降るまちを
思い出だけが通り過ぎていく
雪の降るまちを 遠い国から落ちてくる
この思い出を この思い出を
こんな歌の詩を思い浮かべると、やはりそこには、重く重なった時間の束が、雪になぞらえられていることに気づく。