雪がないと思っていたが、医学部の西を流れる小川にの流れにはまだ雪が残っていた。それでも日当たりがいい雪が融けて、川面に葦の枯れ木が立っているところに鴨の群れがいた。はじめ、葦の枯れ木のなかに身を隠すように休んでいたが、カメラを向けると餌でももらえると勘違いしたのか、一斉にカメラへ向かって泳ぎ出してきた。野鳥でありながら、人に馴れてどこか愛らしくもある。
朝川にひたして赤し鴨の足 蒼 虬
江戸の俳人も鴨を愛したらしく、歳時記には多くの鴨を詠んだ句がある。「海くれて鴨の声ほのかに白し」芭蕉、「水底を見てきた顔の小鴨かな」丈草、「萍に何を喰ふやら池の鴨」嵐雪、「打入りて先づあそぶなり池の鴨」北枝などなど、どの句も鴨の生態をよく観察して、鴨に親近している風を感じさせる。それほど、人と鴨の距離は近かったのであろう。