季節のうつり変わりは、よく観察していると、花にも奇跡のような変化を及ぼす。露の季節に群青色の輝きをみせる紫陽花も、夏が過ぎ、冬を迎えようとしているこの時期、思わぬ存在感を示す。間もなく紫陽花は、根からの水分の供給が止まり、せピア色のドライフラワーになるが、その少し前、水の供給が少なくなって、紫に渋みが加わり、花に威厳のある落ち着きを加える。加齢によって円熟味を増す、認知症前の老人の姿のような気がしないでもない。
冬薔薇や老い未だとも老いしとも 富山 青沂
この花を見て、いつまでも諦めようとしない意思の強さを思わせる。サムエル・ウルマンは詩「青春」のなかで、人間の老いについて述べている。「青春とは人生のある期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ。年を重ねただけで人は老いない。理想を失うときに初て老いが来る。」