常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

マクベスの運命

2017年11月18日 | 日記


悪魔や魔女がこの世にあると信じられていた時代があった。シェイクスピアの悲劇『マクベス』には、その劇の冒頭に魔女が登場する。この劇が演じられるのは、スコットランドで、魔女は人の運命を左右し、その運命を予言できる存在として信じられていた。

魔女たちが話す。「今度会うのいつ?」「この動乱の終わった日」「まだ日の暮れる前」「場所は?」「ヒースの茂った荒野」「そこで会おう、マクベスに」「きれいは汚い、汚いはきれい」呪文のようなものを唱えながら、魔女は舞台を去る。そして、その勝利の日、ヒースの茂る野原にマクベス登場する。マクベスが最初に言うセリフは「こんなに汚くきれいな日は見たことがない」マクベスはこの日の悪天候を汚いと言い、自軍の勝利をきれいと言っているのだが、最初から、魔女の呪文を言わされている。

魔女は口々にマクベスの勝利を称える。「万万歳マクベス!」「万歳、コーダの領主殿!」「万万歳マクベス!将来、国王たるべき人」コーダの領主はダンカン王でまだ健在である。魔女の言葉に戸惑うマクベス。しかし、その心にダンカン殺しの野望が芽生える。この野望に火をつけ、突き進ませるのが、マクベス夫人である。勝利を祝ってマクベスの城を訪れたダンカンを殺すことを強く勧めるマクベス夫人。「希望を持ち続けているくせに、終始勇気ある行動を持続するのが恐ろしいのですか」男らしくあれと、マクベスに迫る。

しかし、マクベスがダンカン王を手にかけ、その死をみた時、事態は一変する。良心の呵責に苛まれて夫人は夢遊病者となって自ら死を選ぶ。ダンカンの子が、多くの兵士を率いて城へ攻め上ってくる。この時になって、マクベスの名セリフが吐かれる。

あれはいつかは死ぬ定めだったのだ。
いつかはこんな知らせを聞く時が来たはず。
明日、また明日、そしてまた明日が
小刻みな足取りで一日一日と這ってゆき、
やがて時の終るその一瞬まで続いてゆく。
そしてわれらのすべての昨日は、
馬鹿者どもが死んで塵に帰る道筋を
照らしてきたのだ。消えろ、消えろ、短いローソク。
人生は歩き回る影、あわれな役者。

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