この冬、一番の冷え込み。空から間断なく雪が降ってきた。霙のようなものは見たが、このような本格的な雪は、今シーズン初めて。空からは、雪の粒が、行列のように真すぐに落ちて来る。静かだ。風もないのだ。時おり、薄い雲から日差しがのぞく。
アンデルセンは童話『雪の女王』で、落ちてくる無数の雪を蜂に見なし、そのなかでひと際大きな雪のひらを女王蜂とした。アンデルセンの想像力は、大きく膨らんで雪の女王が誕生する。
「おもてには、ちらちら、こな雪が舞っていましたが、そのなかで大きなかたまりがひとひら、植木箱のはしにおちました。するとみるみるそれは大きくなって、とうとうそれが、まがいのない、わかい、ひとりの女の人になりました。もう何百万という数の、星のように光るこな雪で織った、うすい白い紗の着物を着ていました。やさしい女の姿はしていましたが、氷のからだをしていました。」
物語は雪の女王が、里の家の少年を連れ出し、女王のお城で結婚し王子になるが、おさな馴染の少女が、女王の魔法から救って里へ帰ってくるという話だ。数年前、空前のヒットとなったアニメ「アナと雪の女王」の原作でもある。どこまでも雪の原が広がる雪国には、アンデルセンのような想像力を持つ作家の魂を生み出す世界が広がっている。
雪の日のゆたかに暮るる一画集 福永みち子