この季節上山を訪れると、あちこちで柿のれんが見られる。上山特産の紅柿を使った干し柿を作るために、屋根をつけた干し場に、柿が吊るしてある風景だ。秋の風物詩ともいえるこの季節の柿のれんは、この地域の風土を物語っている。ここは日当たりよく、蔵王おろしの寒風に加え、地下水位が低くて地面が乾燥しているために、干し柿づくりに適した土地と言われている。
この地方に伝わる伝説によると、300年ほど前、上関根村の旧家の庭に鳥が運んで来た柿が美味であったので、城主に献上したところ、その美味を愛で、紅柿と名付けた。江戸で名産に関根柿として知られていたという記録もある。私が山形に来た、昭和35年ごろ、正月の贈答品として売られていた干し柿は3000円もしていたのに驚いたものである。当時の初任給が1万円にもみたなかったことを思えば、干し柿がいかに高級品であったことが知れよう。
干柿の緞帳山に対しけり 百合山羽公