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芭蕉忌は旧暦の10月12日である。新暦に直すと11月29日になる。芭蕉塚のある義仲寺のあたりでは、時雨となる季節のため、時雨忌とも言われている。安永3年の芭蕉忌には、墓前で句会が催されている。その会で与謝蕪村の詠んだ句、
時雨音なくて苔にむかしをしのぶ哉 蕪村
蕪村は、芭蕉をしのんでいるのだが、その脳裏には「芭蕉野分して盥に雨を聞く夜哉」の芭蕉の句が浮かんでいた。その芭蕉が亡くなって80年、盥の音は遠い昔になって、墓には苔が生して、その上に時雨が音もなく降っている。そんな静寂のなかで、蕪村は芭蕉に思いを寄せているのだ。蕪村の芭蕉への渇仰は、たいへんなものがある。俳句の勉強のためには、まず翁の句を暗記し、口中に唱えるべし、と説いている。三日も翁の句を唱えないでいると、口の中には茨が生えたような状態になるとまで、説いている。