都心に雪が降って、テレビニュースは大騒ぎだ。たしかに、新雪をかぶるビル群の光景はめったに見られない光景だ。深夜雪の積もった坂に、スノボーやスキーを持ち出して興じる若者もいた。したり顔のレポーターが、路上でスキーは危険なのでいけませんと、無粋なことを言っていた。珍しい雪に遊ぶのは、それほど非難されるようなことでもないような気がする。
雪景色は、雪国でも毎日その表情を変える。積雪、日光、気温、空の状況が変われば、おのずと雪の景色も変化していく。日室内に射してくると、急いでベランダに出て景色を見る。10分ほどで、風景は変っていく。
「雪の面には木々の影がいくすじとなく異様に長ながと横たわっている。それがこころもち紫がかっている。どこかで頬白がかすかに啼きながら枝移りしている。聞こえるものはたったそれだけ。そのあたりには兎やら雉やらのみだれた足跡がついている」(堀辰雄「雪の上のあしあと」)