常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

芭蕉忌

2017年11月25日 | 日記


芭蕉忌は旧暦の10月12日である。新暦に直すと11月29日になる。芭蕉塚のある義仲寺のあたりでは、時雨となる季節のため、時雨忌とも言われている。安永3年の芭蕉忌には、墓前で句会が催されている。その会で与謝蕪村の詠んだ句、

時雨音なくて苔にむかしをしのぶ哉 蕪村

蕪村は、芭蕉をしのんでいるのだが、その脳裏には「芭蕉野分して盥に雨を聞く夜哉」の芭蕉の句が浮かんでいた。その芭蕉が亡くなって80年、盥の音は遠い昔になって、墓には苔が生して、その上に時雨が音もなく降っている。そんな静寂のなかで、蕪村は芭蕉に思いを寄せているのだ。蕪村の芭蕉への渇仰は、たいへんなものがある。俳句の勉強のためには、まず翁の句を暗記し、口中に唱えるべし、と説いている。三日も翁の句を唱えないでいると、口の中には茨が生えたような状態になるとまで、説いている。

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イチョウの落葉

2017年11月23日 | 日記


ここの建物にはイチョウの樹が5本ほどある。並木になっているわけでもなく、黄葉しても建物の陰になってさほど目立つ存在ではない。気温が下がると、いつの間にか葉を散らして、そのまま雪に埋もれてしまう。春がきて、新緑になるまで忘れているような樹である。今年は、その落葉が目立った。さほど黄色が冴えたとは思わなかったが、寒気が急にやってきて、見事な色と思ったその翌朝、樹の根元がじゅうたんを敷きつめたようなみごとな落葉になった。その上にさらに新しい落葉が降り積もる。

金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の丘に

与謝野晶子がイチョウの散るろころを詠んだものだが、今朝のイチョウはのどかな景色ではない。戦場で敵の矢に倒れた若武者のを思わせる無残な雰囲気がただよう。鳥であるならば、はたと目覚めて飛び立つのではと、思わせるような生々しさだ。それほどに、押し寄せた寒気は、樹に大きな衝撃を与えたのであろう。


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小雪

2017年11月22日 | 日記


今日は、24節季の小雪である。いよいよ、雪が舞い落ちる季節だが、まだ大雪にになるほどの雪ではないので小雪と言われる。実際の気候は一昨日に平地に雪を降らせる、寒気が降り、昨日の朝は近所の住宅の屋根に雪が積もる景色が見られた。今日になって寒気が抜け、束の間の晴れ間となった。朝、霞んだ山に陽があたり、冬の朝の懐かしい景色になった。夕暮れになると、熱く温めた燗酒が欲しい。白楽天の詩の一節

晩来天雪降らんと欲す

能く一盃を呑むや無や

室内の暖房だけでは凌ぎ難い雪の夜は、このように聞かれるまでもなく一盃が欲しい。熱燗は体の内からも、温めてくれる。

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老いの食卓

2017年11月20日 | 日記


寒さが増して温かい食べ物が恋しい季節。しかし、老齢になると早朝から台所の立つものの負担は、次第に厳しいものになっている。一番簡便な方法は、近所のコンビニで弁当を買ってくることだが、それでは淋しい。老いの食卓の工夫について考えて見たい。私の住むマンションも、今年で築40年、ここに住み続ける人も高齢になってきた。奥さんを無くされた人、奥さんが病で台所仕事ができない家、一人住まいなど、一家団欒ができなくなっている家庭も多い。しかし我家のように老齢の夫婦がかろうじて元気でも、かって子どもたちがいた頃とはほど遠く、食事の量も少なく、バリエイションも乏しい。

我家で頼りしている店がある。コンビニでもスーパー惣菜でもなく、すぐ家の前で営業している「業務スーパー」だ。この店は、開店してから10年ほどになるが、魅力は低価格である。店はスーパーのようなチラシは一切行わず、口コミで客を増やしている。最初に気づいたのは、夏のアイスのコスト。コンビニに比べると、同じ商品でも3割は安い。開店したばかりの頃は、中国製の食品が多く、敬遠する人も多かったが、最近はそのイメージも消えて、レジはいつも行列を作る盛況である。

最近、気づいたことは、この店の人気商品をユーチューブで紹介されている。缶詰に外国の珍しいものが多くある。トマトの水煮やアンチョビなど、スーパーにない缶詰も安価だ。スペインの「イベリコ豚のパテ」170g、143円の瓶詰を買った。卵4個にパテ80g、ネギ半本を刻んで入れてよくかき混ぜる。ちょっと贅沢な玉子焼き。老いの食卓に、新しい一品が加わった。人気の商品に生食馬肉(冷凍)、餃子30個(冷凍)、袋入りのポテトサラダ。調理の時間を節約できる商品もたくさんある。ユーチューブの情報を見ながら、新しい食品を見つける楽しみがひとつ増えた。
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初雪

2017年11月19日 | 日記


この冬、一番の冷え込み。空から間断なく雪が降ってきた。霙のようなものは見たが、このような本格的な雪は、今シーズン初めて。空からは、雪の粒が、行列のように真すぐに落ちて来る。静かだ。風もないのだ。時おり、薄い雲から日差しがのぞく。

アンデルセンは童話『雪の女王』で、落ちてくる無数の雪を蜂に見なし、そのなかでひと際大きな雪のひらを女王蜂とした。アンデルセンの想像力は、大きく膨らんで雪の女王が誕生する。

「おもてには、ちらちら、こな雪が舞っていましたが、そのなかで大きなかたまりがひとひら、植木箱のはしにおちました。するとみるみるそれは大きくなって、とうとうそれが、まがいのない、わかい、ひとりの女の人になりました。もう何百万という数の、星のように光るこな雪で織った、うすい白い紗の着物を着ていました。やさしい女の姿はしていましたが、氷のからだをしていました。」

物語は雪の女王が、里の家の少年を連れ出し、女王のお城で結婚し王子になるが、おさな馴染の少女が、女王の魔法から救って里へ帰ってくるという話だ。数年前、空前のヒットとなったアニメ「アナと雪の女王」の原作でもある。どこまでも雪の原が広がる雪国には、アンデルセンのような想像力を持つ作家の魂を生み出す世界が広がっている。

雪の日のゆたかに暮るる一画集 福永みち子

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