京都の祇園の南に位置する「建仁寺」の南門の向かい側に、古めかしい雰囲気の建物があります。壁には、浮世絵の額がさがっています。


「へえーいろんな浮世絵や絵が、飾られてる・・・美術館みたい…」


役者絵の額や仔犬の絵も。「この仔犬、知ってる…神坂雪佳のだー」京都で有名な仔犬です。
ここは「世界で一番小さな浮世絵博物館」という浮世絵・木版画の摺師、市村守さんの工房兼お店です。


町家の入口部分には、棚が置かれ、その上に木版画の絵葉書や小さなサイズの浮世絵が並べられています。


「いらっしゃいませー」


家の中にも浮世絵がいっぱい。
市村守さんは、今は数が少なくなった浮世絵や木版画の摺師(すりし)。浮世絵は、絵師が描いた絵を、彫師が版木を作り、それを摺師が、摺りあげる分業制の仕事です。それぞれの分野のスペシャリストの技が集約して、初めて優れた浮世絵が完成するのです。

店の奥には、絵具などが並ぶ工房が…。

「あのー浮世絵って、どうやって摺るんですか?」

例えば、北斎の「富岳三十六景」の場合を…

この作品を復刻するには、版木は7枚、絵具は7色使います。版木は、硬く、なめらかな材質の桜の木です。

まずは黒で絵の輪郭から


「わーずれないように摺るのって、すごい技術だよねー」と、ひたすら感心しきりのミモロ。
江戸時代の浮世絵の復刻のほかに、京都の景色を描いた絵はがきや木版画もいろいろ。

昭和期は、木版画やシルクスクリーンの作品が、インテリアとして人気を博した時代です。
京都の四季を表現した作品のなかでも、昭和11年京都市生まれの日本画家、加藤晃秀さんの作品は、大胆な構図と色使いが、ニューヨークで開催した個展で高く評価され、今も外国人観光客に好評。


「モダンな感じが、ステキ…」とミモロも憧れる作品。「でも、すごーく細かい表現がされてるー。これ摺るのって、すごいねー」と。点描画のような表現もほどこされている作品に、絵具を同じようにのせる技術に驚きます。
ここ数年で、カラーコピーの技術は、飛躍的に発達。1枚1万円を越える手刷りの浮世絵は、昔ほど観光客は買わなくったそう。「今、一番、関心を示すのは、外国人観光客ですね。日本の浮世絵など、手刷りの作品の価値をよく知るのは、外国人の方が多いですねー」と市村さん。手刷りの作品には、カラーコピーでは、表現できない、絵具の盛り上がりや和紙への染み具合などの温もりと風情が漂います。日本の木版の技術は、他に類を見ないほど優れた技。
「いつか、こういう技術も廃れて、摺師もいなくなる時代が来ると思います」と市村さんはポツリ。
確かに、カラーコピーの質の向上により、絵具などの質感も表現できるようになりました。
「そのうち、美術館に飾られる、歴史的美術絵画のほとんどが、劣化を防ぐために、カラーコピーになっちゃう時代がくるかも…」と、ミモロは、ちょっと心配に…。
店の外には、英語の表示も。

「朝起きてから、寝るまでお店やってるんだってー。休店日は、休みたい時だってー」
市村さんに、浮世絵などのお話を聞きながら、日本に伝わる優れた技術を改めて感じたミモロでした。
*「世界一小さな浮世絵博物館」市村さんのお店は、京都市東山区八垣通大和大路東、「建仁寺」南門前 電話075-561-7355 午前中から夜まで、不定休

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