今週の「日々ごはん」を読んだら、この短編を読んだと書いてあった
これは「棒がいっぽん」というコミックの中の一篇で
高野さんのなかで、いちばん好きなお話かもしれない
ここへ越してきた1週間後の晩、やっと荷物がすべて片付いて
自分の定位置にお布団が敷けた(それまでは段ボールの隙間)
やれやれと横になって枕元の灯りだけにする、みんな眠ってる
枕の横の本棚に、ちょうど「棒がいっぽん」と「黄色い本」が並んでいて
迷わずあたしは「棒が~」を抜きとって、「美しき町」を読みだした
時代は高度成長期あたりだろうか、どこか田舎の工場町
そこの社宅でささやかな新婚生活を送る、若夫婦が主人公
あるとき、考えの違いから隣人のいやがらせを受け
徹夜で、組合の名簿を作成しなければならなくなった
パソコンやプリンターのない時代、夫婦二人三脚でがんばる
そして最後の一枚が刷りあがったのは、明け方..................
インクの匂いがする部屋で、ホットミルクとクラッカーで一息つく夫婦
開け放した玄関ドアからは、工場が見える、モーターやブザーの音が聞こえる
「たとえば三十年たったあとで、今の、こうしたことを思い出したりするのかしら」
「子供がいて、大人になって、またふたりになって、思い出したりするのかしら」
とふたりそれぞれに、心のなかで思っている.......ってところで終わる
あ~よくわかる、こんなふうに思うときあるな
なんどもあったし、これからもあるのかなって
はじめて読んだときも思ったし、そのときの晩も「今夜のことも」って思った
いろいろ辛かったけど、無事に着地できてその夜は心が満たされていたから
だけど高山さんは違うふうな感想だったらしい、物語というのは面白いものだな
この物語のなかで、いちばん好きなシーンはここだ
裏山にのぼって「我が町」を眺めて日曜日をすごす
他の人達は、電車にのって賑やかな隣町へいき
ショッピングしたりして、騒がしく休日を過ごす
だけどこのふたりにはあわず
おにぎりもって、山をよじ登り(自分たちなりの道すじで)
いい風にふかれながら、町と緑と空を眺める........
そう!これなのよ、あたしの理想の「マニアックドライヴ」はっ
山をよじ登りたいって意味じゃなくて、こ~いうふうに楽しみたいわけ
観光地とか流行とか買物とか、そんなふうに人の流れに流されるんじゃなくて
なんちゅ~か
うまく言えないけど、こんなふに人生を楽しみたいな~と常日ごろ思うわけ
これを読むと、毎回「背筋がのびる」のだ