襟裳昆布 昆布漁の朝
観光地の土産物屋で、日高コンブはどこでも見る事がありますが、近くの沿岸で採れる昆布は土地の名を付けて「三石昆布」「襟裳昆布」などとして売られています。観光地の土産物店ではお目にかかっていません。名は違っても昆布の質は変わらないと思うのですが、土地ゆかりの名には魅力があります。
襟裳昆布を見ていると等級があって、一等級ともなれば三等級の倍の値段で販売されています。昆布の成長の違い(質)と、昆布の部位で値段が違うらしいのです。
早煮昆布も襟裳昆布はおいしく料理できます。昆布漁師の方からお聞きしたのですが、今年の新物よりも年数を経た昆布が美味しいそうです。その方から言わせれば「新物は食わん」というのです。ねんきの入った昆布は昆布自体が発酵し美味しくなるというのです。
昆布漁の日には、浜は活気があります。舟(昆布漁船)が行き来して、採取された昆布がトラックのクレーンで引き上げられ、ミニトラに乗せかえられ、ミニトラは全速力で運転され、昆布干場に運んで行きます。待っていた家の人が急いで干場に並べるのです。誰もが全速力です。老いも若きも、男も女も家族全員一致の昆布作業なのです。
誰もが全速力で動くので、浜全体が活気に満ちています。この浜の動きには浜の人たちの生活がかかっていますので、その中でエネルギーを分けてもらうのです。
8月のえりも植物撮影旅行の時には、93歳になる昆布漁師の方とお話しさせて頂きました。この歳と言えば失礼になりますが、全速力で動く舟に乗って昆布採りの作業をする物だと感心するのです。歳とともに平衡間隔が鈍るのに、よくもまあ舟に乗れるものだと感服したのでした。
植物の写真を撮ってる時を「静」とするならば、昆布漁の朝はまったくの「動」と言えるでしょう。カムイラピットはこの活気ある浜が大好きで、この時間は植物撮影そっちのけで、昆布漁の作業の雰囲気をカメラに納め続けています。
9月7日の朝は、女の人の声で「昆布漁が出来る旨」の放送が流れて、一斉に昆布漁船が海に出て行きました。この風景見事ですよ。男の人の声で放送があった時には昆布漁船は出せないのだそうです。この朝は無事昆布漁がある日となりました。