今朝の東京新聞の30面「カジュアル美術館」欄に、4月にリニューアルオープンした国立西洋美術館の前庭に置かれたブロンズ像《カレーの市民》の写真(↑)と、この像が生まれた経緯が掲載されていました。
記事によると、この像は
『14世紀の百年戦争で英国軍との激戦地となったフランス北部の港町カレーで、1年以上に及ぶ兵糧攻めに苦しむカレー側に対し、英国が主要な市民6名の命と引き換えに、全市民を助けるとの降伏条件を提示。これに対し、街の有力者ウスターシュ・ド・サン・ピエールら6人が出頭したーとの逸話に基づいた作品』で、
『英国王妃の嘆願により処刑は免れたが、命を賭して街を守った英雄としてカレー市がウスターシュを顕彰する記念碑の制作をロダンに発注。ところが、出来上がった碑は英雄然とした姿ではなく、城門の鍵を手に、はだしで歩む6人の群像だった』とのこと。完成作は世界12か所にあり、国内では同館が唯一だそうです。
紙面に載った写真からは、罪人のような姿をした6人の“英雄”の、死への恐怖、深い苦悩がひしひしと伝わってきます。
実は私は、これまで色々な美術展を観に何度も国立西洋美術館に訪れていて、美術展を観た後は、緑豊かな前庭に置かれたロダンの「考える人」と、この「カレーの市民」像を、しばし眺めて過ごしてきました。
今改めて自分が撮った写真を見てみると、紙面の写真より少し裏に回った角度に、絶望の様子で頭を抱えた人物像が見えます。
これまでは、このブロンズ像の重みも、背景の緑との調和で、ひとつの芸術作品として受け止めてきましたが、今日の記事からは、『(戦争の悲惨さを実感する昨今、)英雄的に扱われる功労者の悲しみや、苦悩、傷み』が、リアリティを持って伝わってきました。
今度何かの展示会で国立西洋美術館に行く時には、前庭のこの像そのものも、改めてじっくり鑑賞したいと思います。
今回の記事でひとつ気になったのは、紙面の写真には緑の木々が全然写ってなくて、人物像の絶望が直接的に現れ過ぎているように見えたことです。リニューアル後の前庭はどうなっているのかな、、?(三女)