下調べなどなにもしないで出かけたので、足のむくまま歩き回って、その「一族の墓所」に入っていたっとき、あらら、この一角だけ江戸時代の雰囲気が残っているぞ・・・と思い、少し混乱した。
谷中にある、徳川家の墓地を訪れたことがあり、なんとなく雰囲気が似通っている。
「ん? 2代目、3代目・・・」
「・・・・・・初代がないぞ」
「前橋藩酒井家(厩橋藩3.3万石)初代の墓はどこにあるんですか?」
広い庭を掃ききよめている寺男に訊いてみた。
「初代? ああ、初代は奥」と右のほうを指さした。
2代目以降と比べると、ずっと小さい、地味な墓石が建っていた。
山門。厩橋藩初代の墓前を飾る、萎れはてた造花。
居丈高な建築物。
人影のない冬のプール。
そして「わたし」の影が白い壁を横切っていく・・・。
意識が「外にあるもの」に向かって流れだしていくとき、
奇妙な快感が走りぬける。
眼をとめる、その一点にむかって。
谷中にある、徳川家の墓地を訪れたことがあり、なんとなく雰囲気が似通っている。
「ん? 2代目、3代目・・・」
「・・・・・・初代がないぞ」
「前橋藩酒井家(厩橋藩3.3万石)初代の墓はどこにあるんですか?」
広い庭を掃ききよめている寺男に訊いてみた。
「初代? ああ、初代は奥」と右のほうを指さした。
2代目以降と比べると、ずっと小さい、地味な墓石が建っていた。
山門。厩橋藩初代の墓前を飾る、萎れはてた造花。
居丈高な建築物。
人影のない冬のプール。
そして「わたし」の影が白い壁を横切っていく・・・。
意識が「外にあるもの」に向かって流れだしていくとき、
奇妙な快感が走りぬける。
眼をとめる、その一点にむかって。