久しぶりに読書と思考の興奮をたっぷり味わえる、いい本と出会った。
社会学と経済学のせめぎ合う場所に樹立をもくろむ、野心的な知のカテゴリー構築のこころみでもある。
海外、とくにアメリカやヨーロッパでは研究がすすんでいるのだろうが、日本では、この分野の研究は遅れているのではないか・・・とわたしも漠然と考えてきた。しかし、本書はその不安をほぼ払拭してくれた。
伊豫谷登士翁さんは、移民の研究からスタート . . . 本文を読む
一昨日読みおえ、書かずにパスしようかと考えていた。
それほど、読み応えがない。
高校の日本史の延長においたら、ぴったりくるだろう。さわりだけを撫でてあっさり仕上げた概説の書。
事実認定をめぐって、魑魅魍魎が跋扈するようなややこしい論点へ踏み込んだ論評は、慎重にさけてある。したがって、きわめて公正で、中立な立場から書かれている、――ように見える。
そこが、物足りない第一の原因かもしれない。
保阪さ . . . 本文を読む
この本をどう評価したらいいのか、じつはまだ迷いながら書き出している。
おもしろい部分と、つまらない部分が、複雑に混じり合った織物である。
気軽に読めるエッセイかな、と思っていると、読みすごしにはできない、思想書のような、深い啓示に満ちた数ページがある。
しかし、読みすすめるにしたがい、印象はやや散漫になっていった。
問題提起は鋭いのだけれど、なにか、俗耳にはいりやすい結論に落ち着いてしまう。むず . . . 本文を読む
初心者向けの、ある種のノウハウ本。読者としては、中学生、高校生あたりが想定されているのだろう。
きびしくいえば、中途半端なパッチワークで、たいしておもしろくなかったが、なんとか、おしまいまで読みおえたので、一応レビューを書いておこう。
わたしがこだわりを感じたのは、三島由紀夫論のあたり。
『和尚には老師の持たぬ素朴さがあり、父の持たぬ力があった。その顔は日に灼けて、鼻は大々とひらき、濃い . . . 本文を読む
梅田さんの本は「ウェブ進化論」「ウェブ人間論」につづいて、本書が3冊目。
大きく4つの章立てがある。
1.黒船がやってきた!
2.クオリアとグーグル
3.フューチャリスト同盟だ!
4.ネットの側に賭ける
これに梅田さんの「特別授業 もうひとつの地球」、
茂木さんの「特別授業 脳と仕事力」がついている。小中学生や大学生といった若い世代に対しておこなわれた講演記録。
本書もまた、読み出したらやめられな . . . 本文を読む
本書ではまさに「リアルタイム」での人間論が手探りされている。
アメリカ・シリコンバレーで経営コンサルタントとして暮らしながら、インターネット世界の「住人」を自称し、「ウェブ進化論」でブレイクした梅田望夫さんと、フランス文学に大きな影響をうけながら「日蝕」で芥川賞を受賞した平野啓一郎さん。このお二方の、長時間にわたる対論である。
こんなにおもしろい長時間の対論は、小林秀雄VS岡潔の「人間の建設」以 . . . 本文を読む
佐々木俊尚さんの「グーグル Google――既存のビジネスを破壊する」がとてもおもしろかった。ネット上のレビューをいくつか読んでいるうち、これと双璧をほこる売上げをしめしたのが、梅田さんの「ウェブ進化論」だというふうにたぐるのは容易である。
最初に手に入れたのは「ウェブ時代をゆく」だった。しかし、読み出してすぐに「ウェブ進化論」からさきに読まねばならないと、気がついた。
ひとつの本が、つぎの本 . . . 本文を読む
「なーんだ、いまごろそんな本を話題にしようとしているのか。古いね」といわれるだろうな(^^;) まあ、最新情報には弱いというのが、わたしの大きな特徴で、「よくそれでビジネスの世界に生きていられるね」と友人をあきれさせたことがある。
mixiには775件、アマゾンには76件のカスタマーレビューがある。いまリサーチしたばかりだけれど、本書は、この手の本としては、梅田望夫さんの「ウェブ進化論」と双璧を . . . 本文を読む
この人は、このあいだ「日本辺境論」をおもしろく読んだ。
論点は明快だし、結論の落としどころがうまい批評家だと、わたしはにらんでいる。
本書はベストセラーというほどではないにしても、かなり話題となり、論議を呼んだ本である。大学の先生というより、論壇における、一方の旗頭として、その発言は重みをましている。
「下流志向」は、流行語になったような気がする。
本書のサブタイトルは「学ばない子どもたち、働か . . . 本文を読む
職業としての小説家。
彼は、あるいは、彼女は、恐ろしい職業を選んでしまったのである。
・・・いままで、そんなことを考えたことはなかった。
すぐれた小説を、またおもしろい小説を、作品として書きつづけなければならない。
短編だろうが、長編だろうが、ひとつふたつ秀作を書いたからといって、なにほどのことがあろう。小説家を職業として選んだ以上は、いのち尽きるまで、プレイをつづけ、
「買ってもらえる」作品 . . . 本文を読む