二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

冬の蠅  (No.2024-03)

2024年10月12日 | 俳句・短歌・詩集
ああ なんだか朝からくたびれている。 そうさ それが年をとったってことさ。 朝から そして一日中  くたびれている。 輝かしい光と光のようなものは 夢の覚めぎわに脱ぎすててきた。 二十歳になったアルチュール・ランボーのようにね。 そうして一日中くたびれている。 梶井さんがいう冬の蠅。 いやおうなしにそれと似通ってきた。 そうだよ よたよた よたよた・・・とね。 だれもが七十を過ぎたらこうな . . . 本文を読む
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「さよなら」ってね   ポエムNo.2024-03

2024年09月01日 | 俳句・短歌・詩集
     (平成29年ころ撮影) おーい おい。 そこをゆくのはだれ? だれだれ だあれ。 いつか離ればなれになってゆくんだね。 父とも母とも いずれは。 いずれは離ればなれになる。 そんなに遠い未来ではなく どんどんと“その日”は近づいてくる。 独りだから独りになる。 猫も犬も その他の生きものはすべて そういう運命の下にある。 独りで死んでゆくのだ。 このアスパラガスやジャガイモはう . . . 本文を読む
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幸せと同じように  ポエムNo.2024-02

2024年08月20日 | 俳句・短歌・詩集
     (画像はわが家のコミスジ) 幸せってものは じつにささやかなものだと気がつくまで 何十年も要した。 手があって足があって あまりパッとしないが顔もある。 さっきからスズメどもが鳴いている ちょこまかと移動しながら いつもあわただしい隣人たち。 生い茂る草むらの向こうからグラジオラスの黄や赤がこっちを見ている。 あれは昔よく知っていた女性のだれか なのだ。 日常の時間が見えない川 . . . 本文を読む
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寝返りを打つ  ポエムNo.2024-01

2024年06月12日 | 俳句・短歌・詩集
ああ あ。ああ あ。とつぶやきながら 深夜のベッドで寝返りを打つ。 そうして 深い淵のようなところから 這いあがったり ずり落ちたりしている。 そこに横たわるきみよ いいかげんにしたらどうかね。 何年こんなありさまですごしている。 何年? ごわんごわんとブルドーザーのようなものが通りすぎていった。 その轟音がいまでも耳元で響いている。 ムクドリや女たちのざわめきや木の葉をゆらす風。 反響はも . . . 本文を読む
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いちばんえらくなくて、ばかで、めちゃくちゃで ~宮沢賢治の世界を読み返す

2024年03月31日 | 俳句・短歌・詩集
数日前にBOOK OFFへいったら、こんな本が置いてあった。 「宮沢賢治の真実 修羅を生きた詩人」今野 勉 (新潮文庫) なるほど、そうでしたか、知らなかったけど、文庫になったのが令和2年。 中古好きのわたしが知らなくてあたりまえだなあ(笑)。 どちらかといえば、童話より詩の方が好きである。 大学時代に「夜行列車」という詩の同人誌をやっていたころ、友人たちはほとんど全員宮沢賢治を、緻密によく . . . 本文を読む
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ことばの舌さき 2023-3(7月6日)

2023年07月07日 | 俳句・短歌・詩集
ふと気がついた ことばにも舌さきがあるんだと。 本を読んでいると 否応なしに 否応なしにそれがわかる。 近ごろよくというか ほぼ毎日本を手にして帰ってくる。 何だ またか! ・・・と 自分で自分にあきれている。 五千冊か六千冊の本が わが家のあちらこちらに積み上げてある。 本に遠慮しているわけじゃないが ぼくの居場所がだんだん狭くなる。 何てこった。 ことばの舌さき。 本物の舌とは違って ず . . . 本文を読む
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前橋へ ~飯島耕一詩集「ゴヤのファースト・ネームは」より

2023年07月05日 | 俳句・短歌・詩集
※飯島耕一さん(1930~2013年)はフランス文学者、シュルレアリスムの詩人として出発したが、このころは、こういうとてもわかりやすいプリミティブな詩を書くようになっていた。 この「ゴヤのファースト・ネームは」(青土社 1974年刊)で1973年高見順賞を受賞。 わたしが群馬県人であるため、とくにこの一篇「前橋へ」はインパクトはないが、忘れることができない秀作であると思う。彼はうつ病に悩まされて . . . 本文を読む
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今日からあすへ  2023-02(7月1日)

2023年07月05日 | 俳句・短歌・詩集
   (写真は翅の傷みが激しいキタテハ。2021年6月撮影) 定義は他人がするもの。 だから自分が何者であるかはわからない。 鳥も虫も花も おのれが何かはわからない。 わかったとてどうなる? 生きものは 神さまのまな板の上に身を横たえている。 鳥も虫も花も 皆そうなのさ。 神さまは料理したいように包丁をお使いなさり 塩をふる。 声のない血なまぐさい阿鼻叫喚。 巌頭に押し寄せる波乱万丈の夢の . . . 本文を読む
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上手宰詩集「二の舞」について

2023年07月01日 | 俳句・短歌・詩集
友人の上手宰(かみておさむ)さんが、「二の舞」というユニークなタイトルの詩集を贈呈して下さった。 三好達治賞をうけた前詩集の「しおり紐のしまい方」2018年に続き二冊目。 「言葉は誰かを抱きしめて滅びた遺跡のようだ」と。この一行に指先が震えた。 アリステア・マクラウドの小説のように言語が読み手の胸に沈んでくる。 詩人はことばそれ自体を生きる人種である。 流行作家とは違って、読まれても読まれなくて . . . 本文を読む
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とっぷりと暮れてきた 2023-01(6月20日)

2023年06月20日 | 俳句・短歌・詩集
気がついたとき ぼくは地球のお客さんだった。 まわりにいるのはすべて先客。 生きものたちが押し合いへし合いしている その真ん中あたりに生まれてきた。 ほんの数年に過ぎないとしても 先輩だらけだったあのころを思い出すのはむずかしい。 まわりじゅうがなにやら合唱しているようで 万物がオワンオワン反響していた ・・・ような気がする。 生きものたちはやるべきことをちゃんと心得ていてね。 行き先がわから . . . 本文を読む
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