二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

ほんの少しのたいせつなもの(ポエムNO.3-85)

2020年06月30日 | 俳句・短歌・詩集
   (2015年10月 前橋) たいせつなものは ほんの少ししかありはしない。 川は流れないとよどんで いやなにおいを発しはじめる。 時代がよどんで いたるところ悪臭がしている。 すぐに慣れて感じなくなってしまうから 問題にしようとする人は百人に一人もいない。 たいせつなものは ほんの少ししかありはしない。 だけど ほんの少しのたいせつなものを なおざりにしてきた。 よどんだ空気の底 . . . 本文を読む
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薔薇を愛した詩人大手拓次 ~近代詩の探索者として(下)

2020年06月29日 | 俳句・短歌・詩集
   (2019年5月撮影) <承前> 香料(香、香水、香炉、香気をふくむ)  24編 薔薇   12編 岩波文庫でチェックすると、香料、薔薇をタイトルにふくむ作品が36編存在する。これは瞠目すべき数である。 だから大手拓次を「薔薇の詩人」と称するわけだ。 男と女の色恋のロマンではなく、孤独な詩人の枕辺にあらわれるあえかな幻影の薔薇である。 また大手拓次を「薔薇の詩人」といったとき、近代 . . . 本文を読む
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薔薇を愛した詩人大手拓次 ~近代詩の探索者として(上)

2020年06月29日 | 俳句・短歌・詩集
   (2019年5月撮影) <※ 長くなったので、本稿も2回に分けて掲載させていただく> 大手拓次についてはせんだって小論を書いたばかり。 しかし、岩波文庫版「大手拓次詩集」(原子朗編)を手に入れ、ぱらりぱらりと読んでいるうち、書き足しておきたいことがいくつか出てきた。 大手拓次について語ることは、日本の「近代詩」について語ることと同義ではないか、とかんがえはじめたからだ。 現在手軽に . . . 本文を読む
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流木のように淋しい(ポエムNO.3-84)

2020年06月28日 | 俳句・短歌・詩集
   (撮影 2014年10月) 「精密検査をうけたら 悪いところばかりさ」 と苦笑いしていた友人が亡くなって ぼくは淋しくなってしまった。 だれかと突然走り出すなんてことはもう永久にないだろう。 夢中になって二時間 三時間 バルザックやカフカについて話ができた そういう友人を失ってしまった。 ああ なんということだ。 なんということだろう。 淋しさのなかの真昼 淋しさのなかの真夜中。 . . . 本文を読む
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マスク星人

2020年06月27日 | シャッフル/photos
過去からの手紙31は、すでにUPしたことがあるこれにしよう。 いまどき、どこへいってもマスク星からやってきた“マスク星人”だらけ。 マスクをしないとコンビニにすら入店をためらう(>_ . . . 本文を読む
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音楽のGift(ポエムNO.3-83)

2020年06月27日 | 俳句・短歌・詩集
   (ブラームスの評伝とオリンパスOM-2N 2020年4月) 老年というものは こんなにもすみやかにやってくるのだ。 うとうと昼寝をして目を覚すまで ほんのわずかなあいだ。 さっきアゲハチョウがある花から つぎの花へ飛び移ったぞ。 つまずきそうになって足許をふっと見やる。 ああ 向こうで 洟たれ小僧がたわむれにひっかいたような数本のケヤキが 六月の空の下でにじんでいる。 あんなにも苦し . . . 本文を読む
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人間なのだから(ポエムNO.3-82)

2020年06月26日 | 俳句・短歌・詩集
   (2016年4月 前橋公園) 名前は他のものと区別するため付けられる。 おれはあんたじゃないし あんたはおれじゃない。 のしかかってくる名前 逃げてゆく名前 隠れている名前。 いずれにしろこの地球という大海原の一滴にすぎない どんな名前だって。 動物や植物には図鑑があって それで名前を調べることができる。 ところが人間には図鑑はない。 すべて固有名詞だから? ぼくはきみじゃないし き . . . 本文を読む
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ピジョンブラッドの夕焼け(ポエムNO.3-81)

2020年06月25日 | 俳句・短歌・詩集
   (浅間山夕照 2018年3月) ピジョンブラッドのルビーを通過してきた夕焼けが 一日のへりを鮮やかに染める。 それは天空のかなたから 地上を見下ろす神のまなざしであり まぶたなのだ。 季節をまたぐ川風になぶられながら 甘酸っぱいパイナップルのアイスをかじりながら 公園のベンチに腰をおろし ゆっくりと四方を眺めたり 意味ありげに俯いたりする。 大事なものはまぶたの草むらに落ちている . . . 本文を読む
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春のフーガ(ポエムNO.3-80)

2020年06月24日 | 俳句・短歌・詩集
   (風車 2018年7月) 心地よい春の風を背中にうけて きみは緑の海を帆走する。 うねっていたり雨が降ったり 変わりやすい天気に翻弄されて。 絵のなかから抜け出した少年が 別な絵のなかの少女を手招きしている。 「さあ ぼくの隣りにおいで いっしょに帆走しよう」と。 少年は心やさしい少女と手をたずさえ ステンドグラスの透過光に染まる異国をめざす。 「ねえお腹すいたわ 一休みしましょう . . . 本文を読む
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詩客(ポエムNO.3-79)

2020年06月21日 | 俳句・短歌・詩集
   (love loveナミアゲハ 2014年8月、わが家の庭先) このあいだリビングに詩客がやってきた。 かのアンドレ・ブルトンが。 ・・・といいたいところだけれど やってきたのは拓次さんだった。 むっつり黙りこんだまま ほとんどしゃべらない。 「コーヒーを淹れましょう。 まだ午前中だから」 垢でよごれた和服に懐手しながら ときどき頭をこつこつ叩く。 「うるさくて困っているんだ」 「な . . . 本文を読む
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