■ギャビン・ライアル「深夜プラス1」鈴木恵訳(ハヤカワNV文庫 2016年刊 新訳トールサイズ)原本は1965年
冒頭からこんなことをいっては申し訳ないが、かつて冒険小説の最高峰の1冊として取り沙汰されていた「深夜プラス1」。
だが、今回の読書では、わたし的評価では、残念なことに冒険小説のオールタイム・ベストの30から陥落しそうである。
本編を有名にしたのは、よく知られているようにコメディアン . . . 本文を読む
(左はトールサイズの、右は旧版の表紙)
■ジャック・ヒギンズ「死にゆく者への祈り」井坂清訳(ハヤカワNV文庫 1982年)活字が大きく読みやすい<トールサイズ> 原本は1973年
小説全体にバッハのオルガン「プレリュードとフーガ ニ長調」などが鳴り響く♬
そしていつまでもやまない雨。この作品は、情念がメラメラと燃えているような一篇である。
なぜか、読み了えるまで、ずいぶん時間を要し . . . 本文を読む
■ジョルジュ・シムノン「メグレとマジェスティック・ホテルの地階」高野優訳(ハヤカワ・ミステリ文庫新訳 2023年刊)原本は1942年
作品的な出来不出来だけいえば、たいしたミステリではない。
パズルでよくある小説のように、最後に“名探偵メグレ”がこんがらがった謎を、名推理によって解きほぐしてくれる。「あれれ、そうくるんですか?」
わたしはちょっと虚を衝かれましたよ(´Д`)
でも、この「メグ . . . 本文を読む
■ジョルジュ・シムノン「サン=フォリアン教会の首吊り男」伊禮規与美訳 新訳(ハヤカワ・ミステリ文庫 2023年刊)原本は1931年
小説家デビュー初期の3冊の中の一篇らしいけれど、ミステリとしてはちょっと変則的なストーリー展開となっている。犯罪が起こったのはおよそ10年前、このころのフランスでは殺人が10年で時効になるようだ。「首吊りの男の絵」(第6章)をめぐるエピソードにふれているあたり、往 . . . 本文を読む
(表紙のイラスト。左は巨漢メグレ、右はチビ助の“ばった”)
■ジョルジュ・シムノン「モンマルトルのメグレ」矢野浩三郎訳 (河出文庫 2000年刊)原本は"Maigret au Picratt's" 1950年
Amazonのレビューで「ダントツのAランク」と書いている読者がいる。それほどおもしろかったということなのだ。
わたしも、本編「モンマルトルのメグレ」をAランクとすることに躊 . . . 本文を読む
■ジョルジュ・シムノン「メグレと若い女の死」平岡敦訳(ハヤカワ・ミステリ文庫 2023年刊)原本は1954年
以前から気にはなっていたが、新刊では見つけることができなかったシムノン。ところが2023年に、早川書房が新訳版を刊行してくれた。
古本でもいいのだが、文字が小さいと気勢を削がれる。
わたしが老齢とえる年齢になったからだ。
フランスのミステリは、たしかはじめてのはず( -ω-)
ミステ . . . 本文を読む
■F・W・クロフツ「死の鉄路」中山善之訳(創元推理文庫 1983年刊)原本は1932年
この「死の鉄路」は、途中まではとてもおもしろかった(^^♪
どうやらクロフツの生真面目な作風が、わたしにフィットするようである。しかも1932年刊行とは想像できない現代感覚にあふれている。
企業ミステリの秀作である。
一点一画をも疎かにしない“楷書の見事さ”は本編にもあてはまる。鉄道事業の内実は隅々まで緻密 . . . 本文を読む
■F・W・クロフツ「スターヴェルの悲劇」大庭忠男訳(創元推理文庫 1987年刊)原書は1927年
アガサ・クリスティーがミステリの女王だとしたら、クロフツは王ということになるかもしれない・・・とかんがえるようになった。ハラハラ、ドキドキ、おもしろかったですよ、これ(^^♪
いろいろな隠し味が、じんわりと舌を痺れさせてくれた。トラベルミステリの逸品というのはその味の一つ。鉄道がじつによく出てくる . . . 本文を読む
■F・W・クロフツ「クロイドン発12時30分」霜島義明訳(創元推理文庫 2019年刊 新訳)原本は1934年
未知の方だけれど、神明明さんという人が、本書巻末にすばらしい解説をお書きになっている。
1.倒叙ミステリとしての「クロイドン」
2.警察小説としての「クロイドン」
3.リアリズム・ミステリとしての「クロイドン」
4.経済・企業ミステリとしての「クロイドン」
5.心理スリラーとしての「 . . . 本文を読む
■ヒラリー・ウォー「生まれながらの犠牲者」法村理絵訳(創元推理文庫 2019年刊新訳)原本は1962年の刊行
読み了えて、どうも後味の悪い作品だなあ・・・と思った。
それに、半分ばかり読みすすめたところで、誰が犯人かの見当がついてしまった。
何度もいうように、ドキュメンタリー(あるいはノンフィクション)のような現実を丹念に描いてゆく作風はもちろん健在。
署長のフェローズが、部下に対してブチギレ . . . 本文を読む