どうやらこの店は学生たちのサロンのような場所であるらしかった。そしてこのノートを目的にやって来る常連もいるのだ。
その雑文の折々に出て来るこの店のママは、学生たちにずいぶん慕われているようで、そのノートにはママと学生たちの様々な心の交流はさわやかで心地よかった。
私は探すように厨房を見たが、ママらしき人影はなく、若い男がエプロンをかけてストーブのそばに立っているだけであった。ぼんやりと丸い大きな盆を両手で持って、自分の足を丸い盆で隠すように突っ立っている。それが私には面白かった。
私は再びノートに目を落とした。学生らしい悩みや夢、冗談や揶揄などがほとんど隙間なく書きこまれており、私は知らない間にその中に引き込まれていった。
すると様々な雑文の中に一つのつながったメッセージの交換が私の気を引いた。それは一つの恋が生まれていく過程を写し取っているように思えた。
一人は木の葉某というペンネームで再三登場している学生で、世紀の文学作家と自ら称して短編を連載したり、人生についての思いなどを書いていた。
その文面はいかにも学生風の楽観があり、肩を張って大胆を装う姿が想像できるのだった。
この男の放埓で楽天的な人生論に対して、ある日無記名の女性からささやかな数行の疑問が投げかけられたのだ。
HPのしてんてん
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