「どうした。理由もなく神ひと様をさぐろうとするのか。我らの伝説を汚す者は許してはおけぬ。」太陽の炎がごうごうと燃え立った。
「待ってくれおひさま。理由はあるのです。」博士が代わりに言った。
「何のために、神ひと様を求めるのだ。」
「私達は地球からやって来ました。」
「なに、地球は大切な我が子だ。そこからやって来たと言うのか。」
「はい、地球にはたくさんの生き物が住んでいます。人はみな、平和と幸せを望んでいるのに、どうした訳か苦しみと戦争の絶える事がないのです。どうすればいいのか、神ひと様に会えば、その答えが分かるかも知れない、そう思うのです。」
「地球は出来のいい子だが、最近体調がすぐれぬようだ。宇宙一美しい我が子なのに、最近空気の汚れがひどくなった。お前がその原因なのか。」おひさまは激しく問い詰めた。
「地球は私達の母なのです。だから私達も地球を守ろうと思っているのです。地球と人間が互いに生かし合うために、その方法を神ひと様に聞きたいのです。」
「その言葉を、どう信じろと言うのだ。」
「おひさま、私達は前にも一度、おひさまの子供、彗星モクモクを助けました。煙のために目が見えずに道を見失っていたのです。」
「なに、あの彗星モクモクを助けたと。あれはお前達だったのか。ムムム、それが本当なら、礼を言わねばなるまい。」
「そのままでは地球と衝突するところでした。それで私達は、地球を守るために彗星モクモクを助けたのです。」
「そうか、分かった。彗星モクモクのことは我が子ながら頭を痛めておった。改めて礼を言う。」
太陽は穏やかな表情になって、スケール号を見た。
「疑って悪かった。」
「分かって戴ければいいのです。」
「おひさま、神ひと様に会うために、何か分かっていることがありましたら教えてください。」艦長が言った。
「それなら、我ら太陽族の長老シリウスに聞くがよかろう。」
「シリウスですね。」
「そうだ。」
太陽の表面から、一条のフレアがスケール号目がけて飛んで来た。その先端には真っ赤な太陽の紋章がくわえられていた。
「さあ、この紋章を受け取るがよい。これを持つものは我が友である印だ。この先々役に立つだろう。」
スケール号は口にくわえて、太陽の紋章を受け取った。
「ゴロニャゴーニャゴーヒー!」
とたんにスケール号が悲鳴を上げた、太陽の紋章がフレアの熱で暖められて、熱かったのだ。スケール号は猫舌だった。
スケール号は目を白黒させて太陽の紋章を無理やり飲み込むと、舌を出して、しばらくヒーヒーと風を送って舌を冷やした。
「スケール号、大丈夫か。」艦長が心配して聞いた。
「ゴロンーニヤーン」
声は少しおかしいが、まずたいしたことはないだろう。
太陽の紋章は、スケール号のおなかから、自動的に操縦室まで届けられた。そのころにはもうすっかり紋章は冷えていた。気の毒なのはスケール号だけだった。
「ありがとう、おひさま。」
「まず、長老シリウスに会いに行って見るよ。」
「気をつけてな。」
スケール号はおひさまに礼を言って、その場を飛び去った。見上げる宇宙空間に、無数の星が輝いていた、それはみな、太陽族の王達だった。その中に長老シリウスがいる。
スケール号の旅はいま始まったばかりだ。スケール号は舌をヒーヒーさせながら宇宙を飛んで行く。
(注)彗星モクモクはスケール号の冒険第2話で、悪い雲に覆われて目が見えなくなった彗星モクモクを助けるお話です(当ブログではまだ未公開です)
つづく
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宇宙の小径 2019.6.6
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私の身体
この身体がある
自由に動き回れるこの身体のことだ
この身体の境目に空間がある
そこから向こうは
自分ではないもの
自分の及ばない世界が広がる
本当だろうか
本当?
.
ちょっと
立ち止まって
考えてみたら
不思議とも思わなかったそんなことから
真実に行き着くことがある
あらためて
この身を見たら
切り離せない
空間に
思いが及ぶ
.
切り離せないこの空間
なのにどうして
空間は自分ではないと
思い続けてきたのだろう
知れば
この身は宇宙と一つになって
至福と共に
胸膨らむのに
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