
スケール号はあっと言う間に地球の外に飛び出した。青く輝く地球が今にも壊れそうな程に繊細な大気に包まれて、暗い宇宙空間に浮かんでいる。
「博士、地球から見る空は明るいのに、どうして宇宙に出るとこんなに暗いのだスか。」ぐうすかが不思議そうに聞いた。
「宇宙は真空だからだよ。そこには物が何にもないんだ。だから太陽の光がやって来ても、光を反射するものが何もないから暗いんだね。」
なんだか分かったような分からないような博士の答えだった。ぐうすかはどう質問していいのかも分からないから、分かったふりをした。得意の見かけ倒しの技だ。
「なるほど、そういう訳だスか。」
理由は分からないけれど、確かに宇宙は暗いのだ。
たとえば地球を照らしている光の方向を探すと、まばゆいばかりに燃える太陽が浮かんでいる。あんなに明るいのに、太陽の浮かんでいる空間はやっぱり暗いのだ。宇宙は本当に不思議な所だとみんなは思った。
「艦長、スケール号の船体をあの太陽の大きさに出来るか。」
「お安い御用です、博士。」
「ゴロニャーン」
艦長の命令で、スケール号は太陽の大きさになった。すると、地球は青いビー玉のようになってしまった。
その時、真っ赤な炎のドラゴンがスケール号めがけて襲い掛かって来た!
「ニャーゴーン」スケール号が悲鳴を上げた。
よける間もなく、それはスケール号のしっぽをかすめて飛び去ったのだ。
「艦長、大変でヤす!」
もこりんがそう叫んだときには、炎のドラゴンはもう、太陽の地平線に消えていた。スケール号のしっぽがこげて黒い煙を上げている。
「何だったのだ、今のは。」
「おそらく、太陽のフレアだろう。」
「フレアってなんだスか、博士。」
「太陽の表面から飛び出してくる炎の事だよ。気をつけるんだ、あれに捕らえられたら大やけどをするぞ。」
みんなは窓の方に集まり、太陽を見た。
太陽はメラメラ燃える火の玉だった。
炎がドラゴンの頭のように空に向かって持ち上がり、エネルギーを宇宙に吐き出してはまた地表に帰って行く。危うくスケール号はその炎に捕らえられる所だったのだ。
「何者だ!この天空を乱そうとするのは、魔物のしわざか!!」
突然 スケール号のスピーカーに雷のような声が飛び込んで来た。それと同時にフレアが、行く筋も太陽の表面から飛び上がり、スケール号に襲いかかって来た。スケール号は左右に動いて、フレアの攻撃をさけた。
「私達は敵ではありません、おひさま。私達の話を聞いて下さい。」
艦長が必死で太陽に話しかけた。
スケール号はどんな世界にでも旅行が出来るように造られている。だから、どんな言葉ででも話をする事が出来るのだ。
「何のためにこんな所にいる。ここは我が太陽系の王座だ。だれもここに立ち入ることは許されぬ。」
「おひさま、私達は決して怪しいものではありません。私達は神ひと様を探して旅をしているのです。」
「神ひと様だと。」太陽はごうごうと地表の炎を揺さぶった。
「そうです。この世界で、一番大きなお方です。」
「神ひと様、・・・そういえば伝説を聞いたことがある。」
「本当ですか、いったいどんなことを。」
「ここにあって、しかもはるか彼方にあるもの。我ら太陽族の生まれた理由がそこにあると。」
「それは誰が言ったのですか。」
「我ら太陽族の古くからの言い伝えだ。だが見たものは誰もいない。」
「私達は神ひと様に会いたいのです。」
「だが何のために?!」太陽は激しくフレアを吹き出した。
地表にいくつもの炎のアーチが生まれた。様々に太陽の心が揺れているのだ。返答によっては太陽を怒らせてしまって、フレアの熱で焼き尽くされてしまうかもしれない。
「それは・・・」艦長は返事ができなかった。
つづく
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宇宙の小径 2019.6.4
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太陽と空間
火の玉がなぜ空に浮かんでいるのだろう
東から朝日が昇り夕陽が西に沈む
何も知らなかった人間は
見たままの姿を
太陽と崇めた
中心に
わが
地球があった
その中心が太陽に変ったとき
人間の智慧は空間のある一つの真実を知った
空間は中心のない無限の拡がりだという事を
その空間を通って
太陽から膨大なエネルギーが届く
地上の命あるものはみな
太陽のエネルギーで育つ
けれど
命を育てているものは太陽だけではない
それは空間なのだ
空間が程よい距離を保ち
エネルギーを運んでくるのだ
空間に思いをはせれば
それは瞑想になる
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