八、ぴょんたの愛
悪魔が消え去った黒い海は、まとまりを失い、小さな黒雲の断片となって切れ切れに緑の海の上を漂うばかりだった。悪夢は消え去り、キラキラと光るエネルギーの海が静かに広がっているばかりだった。
今まであった黒い海は姿を消し、その中心に残ったわずかな黒雲が海に浮かんでいた。その雲の上にピピの心が取り残されていた。チュウスケ悪魔が最後に言った言葉のとおり、ピピの心はほとんど、どす黒い紫色に変色しているのだった。清らかなピピの心の中に、怒りが渦巻いているのだ。
「いけない、このままでは本当にピピは悪魔になってしまいます。一刻も早く助けねばなりません。」
「ピピをスケール号に取り込みますか。」艦長がムカエルに聞いた。
「もう遅すぎます。その時間もありませんし、それにスケール号自体が危険です。」
「どうすればいいんですか。」ぴょんたが、じれるように聞いた。
「なんとかしてピピの心の扉を明けさせるのです。ほんの数秒でもかまいません。その一瞬をついて私がピピの心の中に飛び込みます。」
「でもどうやって、ピピの心の扉を。」
「私の見る限り、ピピの心の扉を開ける事ができるのはぴょんたさんしかいません。」
「私ですか。」ぴょんたは耳をピンと立て聞き直した。
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