のしてんてんハッピーアート

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静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

母のリハビリ絵画録15

2018-08-25 | 心のデッサン無料公開授業

(15)2009.12.14(幸せ)

 

 

どんどんと手が動く日は楽しそうだ
私が何も言わなくでも絵が進んでいく。

それが私の幸せでもある。

今日は出来上がった絵を前にして合評会をした。

「おばあちゃん今日はどんな楽しいことあったん?」

「そがなもん、なにもないけどの」

「黄色がいいね、青い風船が楽しそうに空に飛んでいきそうや。幸せになる絵やね」

「この紫が気に入らんのやけどの、どうしたらええのかわからんわ」

「このままでええ、このままでええでおばあちゃん。これは本物や」

「本物てか?」

「本物の絵は人を幸せにするんや。この絵はきっと人を幸せにする」

私は本気でそう思った。

「こがな絵がの?」 真顔で母は自分の作品を見る。

「ほれ、幸せになるやろ? 」

「わからんわ」 幸せそうな母の顔だった。

 

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イキイキとした母を見るのは久しぶりだった。

何も言う必要はなかった。

いつものようにスケッチブックとマーカーを渡すと

すぐに線を引き始めた。

その前から気持ちがたかまっていたのかもしれない

一気に

太い線が横に引かれた。

次々と、堰を切るような勢いに見えた。

 

私はそっと、汚れ物を持って部屋を出た。

母の勢いは、洗濯室で洗い物をする間も、私の気持ちを充実したものにしてくれた。

 

部屋に戻ってきても、母の集中はきれていなかった。

 

「そろそろ色塗るか」

「そやの」

いつものようにクレヨンを差し出すと、迷いなく色を塗り始めた。

 

私はこの時、これ以上の幸せはないと思った。

今、この母が金銀財宝に包まれていても、どれほどの幸せがあるだろう。

あり得ないことだけれど

もし母が誰からも惜しまれる有名女優だったとしても、それが幸せだとは思えない。

誰にも知られない

場末の貧しい一人の人として、

ただ想いのままに色を塗っているこの瞬間の母こそ、

幸せそのものではないだろうかと。

 

出来た絵について語り合った。

思えば中学を卒業して社会に出た私は、それ以後、心に降りてくる深い話をした記憶がなかった。

心の土壌で言葉を交わす、それは貴重な時間だった。

 

私の中に盛り上がった幸福感がそれを証明していた。

今もそう思っている。

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2 コメント

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Unknown (sure_kusa)
2018-08-25 11:12:55
>黄色がいいね、青い風船が楽しそうに空に飛んでいきそうや。幸せになる絵やね
 → そうや、そうや ♪

黄色が力強いですね。
この黄色の中にどれだけのパワーが秘められたのでしょうか。
青い風船は、どんな願いが込められているのでしょうか。
そうや、そうや 幸せになる絵・・ですね ♪
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sure_kusa様 (のしてんてん)
2018-08-25 13:59:38
黄色というのは、なんとなく心に拡がる明るい色だと、私などは思っておりますけれど。

sure_kusa様にも、気に入って頂けたのでしょうか。ありがとうございます。

実は私が一番うれしかったのは、母がこの紫が気に入らないと言い出したことです。

絵を受け身ではなく、自発性の中から出た母の、いわゆる専門用語。

おーぅ、絵を語るようになってきた!!
でし^た^。^よ^

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