(24)2010.2.20(記念写真)
母にはいつも気にかかっている孫がいる。3歳のときから預かって、短大まで育て上げた。子供より可愛い孫だった。それがぷっつり音信が途絶えて5年になる。今頃なっとうしとんのやろのぅ、どこに行ってしもうたんかの、病気しとんのか、帰ってこれんとこにおるんやろかのぉ。心配で胸痛む日々だった。
その孫が、施設を訪れておばあちゃんに会いに来た。 結婚して二人の子供の写真を持って。どれだけ安堵して、どれだけ喜んだか、その場にいなかった私には分からない。
部屋の食台に置かれた結婚の記念写真と赤ちゃんの写真を見て私は不審に思った。真っ先に徘徊する施設の誰かが持ってきたのか、それとも母がどこかの部屋から持ってきたのかと思ったからだ。
「これ誰の写真?誰が持ってきたん?」 私が聞くと、
「だいそが持ってきたんやな、誰やったかな」とのんびりした曖昧な返事をする。
母の孫、それは私の姪だが、写真を見てそれが姪だとは私もその時気付かなかった。顔立ちに見覚えはあったが、それを一瞬で姪につなげるのはあり得ない話だった。胸騒ぎがして、私は職員さんの詰め所に写真を持って行った。私は言葉を選びながらその顛末を聞いてみた。訪問者の記録簿がありますからと言って見せられた台帳に紛うことのない姪の名があったのだ。5年も行方の知れなかった姪が結婚を知らせる写真を持って来てくれたのだ。
「おばあちゃん、孫やで、孫が来てくれたんやろぅ、会ったんやろ?これ孫の子どもの写真やで。ええ家庭持ってたんやなぁ」
「そうや、だれやか、来とったのぅ」
あんなに待ちこがれていた孫なのに母はあまり覚えていない様子。それ以上聞きたてることはやめて、そっとしておこう。それでも今日の絵は母の心を表している。喜びが満ち溢れている。素晴らしい絵だった。
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母の最善の傑作
今見ても心が癒されます。
朗らかで明るい素敵な絵ですね。
母の一番うれしかった絵なのかなと思っています。
そんな気持ちが伝わって嬉しいで^す^