徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

海女の姉妹の哀しい恋物語 ~ 歌舞伎舞踊「汐汲み」 ~

2013-08-19 21:43:54 | 音楽芸能
 時は平安時代、都に在原行平(ありわらのゆきひら)という貴族がいました。ある過ちをとがめられ、須磨に流されました。そこで行平は海人の娘、松風と村雨という姉妹に出逢います。二人は行平の世話をするようになりました。そして、いつしか二人は行平を愛するようになります。3年の月日が流れ、行平は罪を許され、都に帰ることになりました。行平は二人が海へ汐汲みに行っている間に、二人と出逢った浜辺の松の枝に形見の品として、烏帽子と狩衣を掛けて姿を消しました。二人の姉妹は、またいつか行平に逢えることを信じて暮らしていましたが、ある時、風の便りで、行平が都で亡くなったという事を知ります。二人は形見となった烏帽子と狩衣をずっと大事にしながら儚い生涯を終えました。
 それから長い年月が経ったある日のこと、旅の僧がこの浜辺を通りかかりました。僧は二人の汐汲み女に出会います。二人は僧に「私たちは松風と村雨と申す者で、この世の者ではありません。死してなお、恋の未練によって成仏できません。ぜひとも僧の回向によって私たちを成仏させてほしい」と懇願しました。そして松風は形見の烏帽子と狩衣を身にまとい、行平を恋う舞を舞いました。僧は懇ろに二人を弔いました。やがて夜が明け、朝日が上り始めると、僧の前から二人の姿は消え去りました。