先日見た「母べえ」のクレジット・タイトルの背景が、小津安二郎の映画でおなじみのキャンバス地が使われていた。山田洋次監督の小津さんに対するオマージュなのかどうかわからないが、何らかの想いが込められているのだろう。そう言えば成瀬巳喜男監督も時々このキャンバス地を使っていたような気がする。このクレジット・タイトルは映画全体の印象を決めかねない非常に重要な要素だと思う。懲り過ぎも困るが、シンプルかつセンスが感じられるようなものがよい。私が一番好きなクレジット・タイトルはジョン・フォード監督の西部劇「荒野の決闘」だ。道路標識と思しき板に文字が焼き付けてある。しかもバックに流れる音楽が“愛しのクレメンタイン”のコーラスからホーダウンし、次に“テン・サウザンド・キャトル”に変わり、再び“愛しのクレメンタイン”に戻って終る。これ絶妙!フォード親父が「どうだ!」と言わんばかりにウィンクしているような気がする。
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「東京物語」小津安二郎、1953年
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「荒野の決闘」ジョン・フォード、1946年
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「東京物語」小津安二郎、1953年
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「荒野の決闘」ジョン・フォード、1946年
タイトルバックのキャンバス地、よく見ますが流行っていたのでしょうか?タイトルってとても重要ですよね。筆文字の書体とか、タイミングとか、バックの音楽とか、始まって何分で観客をその世界に引きずり込むか~ですから。名作はやはりタイトルからいいですね。