個展2日目、昨年の個展で勾玉ペンダントをお求めになったご婦人が、ブレスレットに仕立て直して毎日身に着けています!と見せてくれた。
歩きながら、バスに揺られながら、指で撫で、掌でにぎにぎして愉しんでいるそう。絹紐の色や太さ、長さの調整など、工夫も愉しかったのではないだろうか。
自分がつくった勾玉が大事にされている、愛されている・・・泣けてくる。
5億年前に誕生して、太古の地殻変動で地上に露頭したたヒスイが崩落して川に流れ、砕けて磨かれ誰かに拾われた。
そのヒスイを売った人、買って勾玉に加工した人がいて、根津のギャラリーで買い求めたご婦人が、自分好みにカスタマイズして毎日にぎにぎしている、ヒトとヒスイの物語。
ヒスイは時を流れて物語を運ぶ舟のように感じる。ヒトもまた物語を運ぶ旅人。希少鉱物というだけで尊いんじゃない。
ヒスイに出逢って心を動かされたヒトがいてこそ、物語が生まれる。
本居宣長はその心の共鳴を「もののあわれ」と定義し、松尾芭蕉はヒスイ原石が勾玉に生まれ変わることを「造化」と呼んだ。
トークイベントではそんな話もできたら幸い。