昨今の日本は、どの分野でも「誰でもわかりやすく・興味をもってもらう」ための、お子様ランチ化・コスプレ化・ゆるキャラ化の風潮が過ぎるのではないか?
「松浦武四郎記念館」で頂いた新刊「おーいたけちゃん!」もその類いかと思っていたら、見開き2ページごとに4コマ漫画と山本館長の解説文でエピソードを解説していて、非常に読みやすく面白かったし、「誰でもわかりやすく・史実を踏まえた」武四郎の入門書として読み応えがある内容だった。山本館長の解説分も、やさしい文章で端的にまとめていて、読みやすい。
4コマ漫画とイラストの作者も松阪市職員らしいが、諧謔精神が旺盛だった武四郎の出身地の気風なのだろうか。値段は印刷されてないが多分800円くらい。
裏表紙・・・出生から蝦夷地探検の動機、旅の資金源、アイヌ民族との交流、交友関係など、これ一冊で概要がつかめる名著。
数年前にNHKで武四郎の長編ドラマが放映されたが、ボロボロの身なりで「乞食武四郎」と呼ばれた武四郎をピカピカの若侍然とした人気俳優が演じていたり、まっぴるまの江戸市中で松前藩の刺客に襲われるなど、在りえない漫画チックな場面の連続で酷いものだった。
史実・事実を踏まえると「誰でもわかりやすく・興味をもってもらう」のは難しいですな。ヒスイ業界でパワーストーンやスピリチュアルな文言を抜きにした商売しているワタシの実感w
松浦武四郎は手紙を沢山だしているが、友人には悪筆が有名で、もっと読みやすい文字を書いてくれ!と文句を言われていたそうだ。しかし絵は達者で、そののなかで秀逸なのがアイヌ民族の鶴の舞いを描いた絵。
映画のコマ割りを繋げたような大胆な構図が心憎く、歌い声が聴こえてきそうな臨場感がある。既存の絵画手法にとらわれない武四郎の自由奔放さが北斎のようだ。こういった処も武四郎の人となりが伺える。
明治の皇民化政策によりアイヌは伝統的な文化を禁止され、いつしか祭礼も忘れ去られていたが、武四郎が詳細な絵入りで記録していたことにより、最近になって祭礼の復興に貢献したと聞く。
江戸期の武四郎は尊王攘夷の志士、探検家、旅行作家、民俗学者、アイヌ差別への人権問題活動家と多面的な側面をもつ。話しも巧かったようで、会った人は魅了されて支援者となったので人脈も広かった。
藤田東湖などは「日の本一の奇男子」と評価しているが、大物政治家たちに依頼されてフリージャーナリストのようなこともしていたようだ。
以前の「松浦武四郎記念館」の展示品は撮影不可だったが、SNSに写真を投稿する人が後をたたないことから、「山田さん、もうどんどん宣伝しちゃってください!」と言われたw