映画監督になるには、映画会社に入社して脚本家か助監督を務めてからという常識を崩したのが、学生時代から8㎜カメラで自主製作映画を撮ってはアングラ発表をしていた大林宣彦監督の世代。
新進気鋭の大林監督の才能に目を付け、テレビCMの監督を依頼したのが電通で、大林さんは外国人俳優を起用して短編映画のような革新的なイメージCMの傑作を連発、多くの流行語を生んだ。
周囲の大反対を押し切り、男性化粧品とは真逆の男くさいチャールズ・ブロンソンを起用して「ウーン、マンダム!」とだけ言わせ、男でも化粧品を使うことへの罪悪感(笑)を払拭することに成功!
イタリアの大女優、天真爛漫なソフィア・ローレンにホンダのスクーター「ロードパル」に乗せ、商品名とは無関係の「ラッタッタ~!」とだけ言わせて、男の乗り物だったバイクを女性向きのお洒落で便利な乗り物として認知させることに成功した。
あの当時の日本の男はブロンソンになりきって「ウ~ム、マンダム」と鏡に向かったし、田舎の老婆でもローレンになり切って「ラッタッタ~!」と颯爽とスクーターに乗っていたし、大人も子供もみんな真似をした。
ハリウッド俳優のカーク・ダグラスがインスタントコーヒーを美味そうに飲むという、現実にはあり得なそうな演出でインスタントコーヒーの高級感を演出!
黒澤明監督でさえも映画産業の斜陽化で黒澤プロの経営が苦しい中、やむなく受けたウイスキーのCMに、大林監督作品「さびしんぼう」を観た黒澤監督がCM監督に大林監督を指名し、大の露出嫌いの黒澤監督を御殿場の別荘でウイスキーを飲ませ、サングラスを外させた。
「初恋の恋人」カルピスCMは、当時絶大な人気を誇ったスケート選手のジャネット・リンを起用して「白い恋人」として売り出した。
映像作家としてのみならず商業広告界に革命をもたらせた大林監督の功績は大きい。
著名人、俳優の個性を引き出し、商品とマッチングさせて演出した大林監督は、人間が大好きだったのだと思う。
70年代以降は映画監督として快進撃を続け、晩年は地方創生の映画製作に活躍。
惜しい人を亡くした・・・。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます