高田駅の雁木通りにある築70年ほどの大衆食堂の「上海」は、コンクートの土間、木製建具、赤いビニール張りの椅子、デコラ張りのテーブル、白い割烹着にスカーフの店員と、絵に描いたような昭和の大衆食堂だ。
家族でこんな大衆食堂で食事した子供時代の記憶がよみがえり、いつもシンミリする。椅子をひいてギギイ~とコンクリート土間にすれる音がたまらない。
パラパラな炒飯もいいが、こちらのはモチモチした食感がシミジミと懐かしい感じがして焼き飯と呼びたいし、あっさり味のラーメンは中華ソバと呼びたい。ここでは店の雰囲気やたたずまいもご馳走だ。
商売をはじめて70年というから、ことによると5世代に渡る近所の馴染み客もいるだろう。折しも小あがり座敷で賑やかに食ってる親子三代の家族連れがいて、いつかあの少年も「上海」に彼女を連れてくるのかな、と思った。
店内にトイレはなく、いちど店の外に出て、かって料亭をしていた別棟のトイレをつかう。ちょっとした探検気分が味わえて実にいい。
懐古趣味とバカにしてはいけない。懐かしいは生活に潤いをあたえるチカラ。故人を偲ぶ祈りにつながる。
それは一度は途絶えて往時を知らないといえども、ヒスイや勾玉もまたそうなのだ。なんだか懐かしいと感じる勾玉をつくりたい。
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