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日本を代表する映画監督・・・山本薩男著「私の映画人生」

2023年12月04日 07時23分36秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画
黒澤明と同い年で、東宝入社もほぼ同期、戦前戦後をつうじて名作を連発していたのに、黒澤・小津ほど有名でない山本薩男監督の自伝が面白い!
「荷車の歌」「戦争と人間」「にほん泥棒物語」「白い巨塔」「金環食」「あゝ野麦峠」「不毛地帯」「華麗なる一族」などなど、多種多彩なテーマで話題作をヒットさせ続けた偉大な映画監督。
わたしが最初に感銘した山本作品は、明治から戦後までの農民夫妻の生活を描いた「荷車の歌」。お金のない独立プロであっても、農村婦人部の100円募金で製作した画期的な映画で、現在のクラウドファンディングの元祖。
 
一言で評するなら山本作品は、弱者目線の骨太の人間ドラマとリアリズムで、社会問題や権力の暗部を告発する映画。
戦争はなぜ起きる?勲章が欲しい軍人と商売したい財閥(映画では伍代財閥。実際には日産の元になった日産コンチェルン)がいるからという利権構造を、3時間の大作で3部作で描いた名作。当初の構想は5部作として、東京裁判で財閥が解体されるところまで描きたかったそうだが、予算的に無理だった。山本の兵役体験が反映されている。
 
戦前の映画人や演劇人には、軍国主義に抵抗する左翼活動で逮捕された経歴をもつ人が多く、山本や黒澤も同様であった。戦後の山本は共産党員になったこともあり、レッドパージで東宝をクビになり、独立プロを立ち上げてフリーとなり困窮した時期もあったようだ。
 
権力の利権構造や暗部を暴いた映画も多いので、自民党や警察からアカの監督と目の敵にされ、右翼から脅迫され続けた。
山本薩男を知らなくても映画を観た人や、タイトルを聞いた人は多いハズ。大学病院の暗部を描いたのが「白い巨塔」
 
それでも芸術家肌で気難しい黒澤と違い、職人肌ぼ山本はお堅い文芸作品でもユーモアやエロテェックなサービスショットも忘れず、予算と納期を守ってヒットさせる手腕が高く評価され、保守思想をもつ大手映画各社のオーナーたちから重宝がられた。
 
また忘れてはならないのが、山本作品のリアリズム。
「にほん泥棒物語」に、土蔵破りや監獄内部の描写があるが、三国連太郎演じる主人公のモデルとなったホンモノの泥棒から指導を受け、撮影現場で人気者だったそうだ。
 
警察が自作自演で国鉄労働組合の弱体化をはかった「松川事件」をあつかったこの映画は、原作は陰惨な内容であるらしい。が、山本は事件の真相を知る目撃者が泥棒であり、法廷で「警察が嘘をつくつうのはどういうことだんべ?嘘は泥棒のはじまりって言うではないか!」と証言して法廷に笑いが広がったたことに着想を得て、泥棒を狂言回しにしたコメディ映画に仕立てた。
 
ラストで泥棒が警察をやり込める法廷劇となる。このカタルシスは流石という他はない。もっと評価されるべき映画監督。
 
 
 
 


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