志ん生に負けず劣らず、現役の貧乏話で有名な噺家は、滝川鯉昇(たきがわりしょう)師匠。
外見のインパクトに対し、静かで上品な語り口調のギャップからして可笑しい。
入門時に師匠から最初に教わったのが、噺ではなく食える雑草の知識だったそう。
鯉昇師匠は噺もむろん上手いが、落語に入る前の「まくら」が秀逸で、「食えない時代にはジョギングを装い、皇居のお堀の植え込みの陰で大根を栽培して食費を抑えていたが、上には上があるものでスコップと鍬を隠して農業をしている人までいました・・・」などと、ほのぼのとした口調で爆笑の渦に誘う。
弟弟子の春風亭昇太師匠によると、「鯉昇兄さんの若い頃はものすごく暗く、ホームレスみたいな恰好をしていた」ので、明治大学の落研時代に高座着を包んだ風呂敷を持って歩いていたら泥棒と間違えられて捕まった逸話も持つが、いまやチケットは即日完売の売れっ子で、有望な弟子も多い。
いちど独演会の会場で挨拶したことあるが、高座では春風駘蕩の噺家でも、ものすごく澄んだ目を持つ腰の低い苦労人という印象。
YouTubeで初めて観るなら「時そば」がいい。
津軽三味線の当代の高橋竹山さんは筋金入りの落語好きで、好きな噺家の話で盛り上がったけど、鯉昇師匠の「時そば」を語る時には吹き出していましたヨ。
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