以前にある神主さんから、某所で買ったヒスイ製石笛の作り直しを頼まれた。
作り直して送り返したら「生まれ変わってヒスイが喜んでいます!」と嬉しい連絡を頂き、以降は糸魚川市に遊びに来て頂いたりして親しくなった。
ご神事用石笛・銘「飛天」青ヒスイ石笛
石笛にしてはドッシリとした重みがあるが、吹き孔が大きいのでこれでもギリギリまで薄く作ったので、孔の中から外部の光が透けてみえる。
今回は私の石笛を色々と吹いてみて、気に入った吹き孔の直径と深さの特定した上で、「飛天」というイメージで作って欲しいというご注文。
私のイメージする「飛天」は、シルクロードの仏跡の壁画に描かれた蒼穹を遊び飛ぶ天女達の姿。
飛天というからには青ヒスイだなと、原石の在庫を探したら、浅黄色(うすい水色)に白が入った青ヒスイが出てきた。
今回は、途中からご神鏡に写る「飛天」というカタチが観えてきた。平らな部分がご神鏡で、蒼空に叢雲、黄色い斑(フ)は天女の姿が写っているのだ!と言い切ってしまう(笑)
「浅黄に銀の一つ紋」といえば、浪曲や講談などで満月の夜空の描写する慣用句だが、浅黄に白だから蒼空と叢雲ですな・・・原石は決まった。
さて、デザインだが、私はまずじっくり原石を観察してから基本デザインを決めていく。
最初に作りたいデザインは決まっておらず、原石から作るべきカタチが観えてくるまでじっくり待つのだ。
朧げなカタチが観えてきたら原石にラフなカット線を描いて作り始めるのだが、この時点では完成時の50%くらいのデザイン。
一般的なヒスイ加工は、作りたいモノそのものを原石に描いて忠実に切ったり、削ったりしていくのだけど、私は予定調和を好まないので原石を削りながらデザインを見つけていく受動的な作り方。
最初からデザインが決まっていれば、迷いなくカタチを削っていくので仕事は早いし、原石に無駄が出ないのは解っている。
でも私が作りたいのはご神事に使う石笛、祭器だ・・・能動的な仕事だと作り手の観念の限界を越えられないと思うのだ。
人為である事に違いはないのだが、人為を越えたモノがやってきて、私の手を借りてナニモノカを作っていく、というシャーマン的な仕事をしてみたいという想いはあるし、そう心がけている・・・出来ているとは思わないが、そうありたい(笑)
裏はフックラとしたカタチ。表裏の形状が違う事で石笛が保持しやすくなっているが、実利面以前に「そんなカタチ」に何かの必然性を感じた。
その昔、仏師の運慶は「木の中から仏を彫り出す。」と言ったとか言わなかったのか・・・運慶が主人公の誰かの小説に書かれた運慶の言葉らしいが、創作なのか本人の言葉かどうかは知らない。
「ヒスイの中から祭器たる石笛を削りだす。」と胸を張って言える時が・・・来るくらいの巨匠になれるといいねえ(笑)
せめて「気分は運慶!」というところか。
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