小学校の授業で日独伊三国同を習った時、なんで資源のない小国同士が集まって世界を相手に戦争したの?なんで国力が20倍もあるアメリカと戦争をしたの?勝てるわけないよなぁ、とクラスメイトと首を傾げた。
個人的には、日本にはヒトラーやムッソリーニみたいなカリスマ独裁者がいなかったのは何故か?がずっと疑問だったが、その答えがこの本に克明に書かれている。
東京オリンピックの特集番組での捏造を「誤りがあった」と謝罪して信用失墜に拍車をかけたNHKにも、真摯に番組つくりをする記者もいる。
戦後35年経ってから、主に元海軍軍令部の佐官級の幹部たちを中心に集まり、非公表の反省会を録音した400時間にも及ぶ証言テープの内容を、一時資料の照会や関係者へ聞取り調査を足掛け6年間に渡って地道に取材したNHKスペシャルの書籍化が本書。
「私は戦争に反対していたんだが、突出する陸軍との予算取り合いが結果的に対米英戦の準備になった・・・戦争を支持する世論を抑えきれずにやむなく開戦となった・・・特攻は現場部隊が始めた軍事行動であったので「作戦」ではなく、軍令部は命令していない」、などなど当事者たちの責任逃れに対し、別の立場にあった人物が糾弾する生々しい音声記録の数々。
軍令部とは海軍の意思決定や作戦立案指導の組織なのだが、この責任の所在が曖昧で保身的な組織の在り方を「海軍あって国家なし」と、海軍反省会では批判意見は出てはいるが・・・。
要するに戦争のリーダー的役割を担っていた当事者たちが、戦争の主体が「排他的な民族優位思想と好戦的な時代の空気感」であったとするところに、現代に通じる日本的組織の危うさを感じてしまう。ヒトラーのような独裁者は必要しなかった訳だ。
八紘一宇、挙国一致、神武皇紀、無敵皇軍、五族共和、神州不滅、一億玉砕、鬼畜米英、万世一系の皇統、現人神、亜細亜解放の聖戦・・・明治以降に創られ、昭和初期から喧伝された「神国日本」神話の肥大化と暴走は、現人神であるはずの昭和天皇をしても制御できない国家的共同幻想となっていった。
その時代の空気感に異議を唱えると非国民、国賊、君側の奸として排除したのが、五・一五事件や二・二四事件。東京オリンピック開催に反対する意見に対し、当時の安倍総理が似たような発言をしていましたな。
マスコミや世論はクーデター未遂事件を起こした青年将校たちに同情的で擁護もしたが、戦争に負けてから「騙された!」と騒いでも遅すぎる。
漢字4文字の熟語が多用される時代は黄色信号・・・その時代をリアルに経験している半藤一利氏は警告している。
SNSで八紘一宇や神武皇紀といった四字熟語、大東亜戦争は亜細亜解放の聖戦だったという趣旨の投稿を目にするとヒヤリとするのは私だけだろうか?
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