先日、鉄道と飛行機を乗り継いで、シンガポールからタイのバンコクまでマレー半島を北上してきました。
その3ではペナンからバンコクまで(4月19~20日分)を掲載します。
日程
4月17日:シンガポール →(列車)→ クアラルンプール
4月18日:クアラルンプール →(空路)→ ペナン
4月19日:ペナン → (フェリー) → バターワース →(夜行列車)…車中泊
4月20日:バンコク到着
ペナンは離れ小島なので、鉄道に乗るためには、半島側の対岸の街バターワースへ海を渡る必要があります。12時ぎりぎりにホテルをチェックアウトし、タクシーでフェリー埠頭へ。
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左:ペナン側フェリー乗り場の入り口付近。売店が並ぶ。
右:マレー鉄道の窓口もあるので、バターワースまで行かなくてもここで切符を購入できる。
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左:乗船通路。フェリーの料金は変則的で、バターワース(半島側)→ペナン(島)の場合は有料ですが、逆にペナン→バターワースの場合は無料。よって途中何もゲートらしきものを通らず、そのままフリーで乗船。
右:フェリーの客室にはガラスなど無く、屋根と柵と椅子があるだけ(小さな売店もある)。海を渡る風がそのまま吹き抜けてゆく。とても気持ち良い。なお船の下層階は自動車運搬スペース。
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さらばペナン。途中全面黄色塗装のフェリーと行き違う。
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20分弱でバターワースに到着。ペナンと比べてビルなどの大きな建物が明らかに少なく、鄙びた印象を受ける。浜に舫われたロングテイルボートがなんとも長閑な光景を作り出していた。
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バターワースの船着き場と鉄道駅およびバスターミナルは屋根付き通路で連絡されており、いずれも至近。
左:バターワースのバスターミナル。マレーシア各地へのバスが発着して賑やか。
右:バスターミナルの奥にある屋外食堂街でナシゴレンを食べる。猛烈に暑くて無風状態の中、汗を滝のように流しながら、ペプシとともに飯を腹に掻っ込む。
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左:バターワース駅。駅前にはSLが静態保存されている。
右:待合室入り口。チケット窓口はもちろんのこと、売店や両替所がある。これから長時間の乗車ゆえ、水2本と小腹が空いたとき用のスナック菓子を購入。
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左:駅の待合室はなんと冷房が利いていた。外は酷暑なので、まるで天国のよう。
右:待合室の片隅には、かつて使用されていた鉄道用品が展示されている。転轍機標識のランプ類が多く、その他通票や車番プレート、写真など。
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左:駅に掲示されている時刻表。一日4往復しか発着しない。寂しいねぇ…
右:ホームには乗車案内の看板が立っていますが、何しろ1日4本しか発車しないので、乗り間違えることはないでしょう
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頭端式ホーム。クアラルンプール方面列車もハジャイやバンコク方面列車もこのホームに発着する。何度も言うが、両方面併せて一日4往復。
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左:バターワース14:20発のバンコク行国際急行36列車。マレーシア国内はマレー鉄道のディーゼル機関車が牽引。
右:客車最後部。この列車はタイのハジャイまでたったの2両しか連結されない(ハジャイで8両増結)。それだけ列車で国境を超える客は少ないのだろう。なおこの客車はタイ国鉄所有のもので韓国・大宇製。
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左:2両の列車はすべて2等寝台(1等寝台はハジャイから)。車内は日本の583系寝台電車を2段にしたような構造で、昼間ボックスシートになっている座席が夜には下段の寝台となり、上部の出っ張りがパカっと開いて上段の寝台となる。従って寝る向きは進行方向と平行になる。
右:洗面台にはタイ語のハミガキの広告が掲示されており、これからタイへ向かうことを実感させてくれる。なおトイレはタイ式(和式のようにしゃがむスタイル)と洋式それぞれ1つずつ。紙も用意されていて、割ときれい。
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左:「バターワース←→バンコク」と書かれたサボ(行先表示板)。この列車がバンコクまで行く証し
右:今回の乗車で使用した切符。国境を越えるバンコク行は1日1本で、しかも上述のように2両しか連結されないので、できれば事前に予約しておくのが吉。しかし、この国際列車はタイ国内やマレーシア国内で運転される各列車と違ってネット予約はできないので、日本人が経営するバンコクの旅行代理店(たとえばプログラムDインターナショナル)などに手配してもらうこととなる。日本国内だとHISで手配可能(そのかわりかなり割高)。
この切符はマレー鉄道で発券されたものだが、当列車はタイ国鉄が運行管理している。何を言いたいかというと、どうやらこの列車はマレー鉄道とタイ国鉄で座席割り当てにそれぞれ枠があるらしく、もしタイ側で手配して満席だったとしても、マレー側から手配すると席を確保できる場合がある。この切符はまさにそれによって入手できたもの。
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列車は定刻通り出発。この列車は座席指定の切符を持っている客以外に、マレーシア国内ではいわゆる「ヒルネ(※)」利用が可能。途中駅から次々に地元民が乗り込んでくる。そして国境手前のARAU駅まででその全てが下車し、車内は指定券所持客のみになる。
(※)ヒルネ:日中において寝台車を一般の列車のように座席利用する乗車形態。
バターワースを出発後の車窓は、しばらくスラムのような水上家屋や小規模な街がポツポツ現れてからゴム林が続き、アロースター辺りから水田や畑が目立つようになって、国境に近付くにつれ耕作地が減ってゆく。この画像は国境付近。
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ARAU駅を出発してしばらくした頃にタイの入出国カードが配られる。そして18:15、国境の駅であるパダンブサールに到着。画像はパダンブサールのホームで、左側の建物がイミグレ。まずマレーシアの出国手続き。その1で書いたように、私のパスポートにはマレーシアの入国スタンプが捺されていないので、シンガポール発の列車に乗った時の切符(e-チケット)をパスポートと一緒に提出したら、向こうは心得たもので、すんなりOK。
続いてタイの入国手続き。在東京タイ大使館によると陸路入国にはビザが必要と説明されていますが、少なくともパダンブサールでは不要でした(実際私はノービザでした)。そのかわり滞在可能日数は15日間です(空路入国の場合は30日間)。
入国に当たってはてっきり手荷物検査があるのかと思いきや、荷物はノーチェック。それを知らずに私は重いスーツケースをコロコロ転がしてしまいましたが、結局無駄でした。事情を知っている人たち(特にマレーシア人)は荷物を車内に置きっぱなしでした。
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左:パダンブサールで車内クルーもタイ国鉄の人間に全て入れ替わり、出発してすぐに夕食のオーダーを取りに来る。西側の車窓には地平線に沈む真っ赤な夕陽が綺麗に輝いていました。
右:食堂車へ行かなくても、各席へクルーが夕食を届けてくれます。しかもいくつかメニューが選べます。トムヤムスープと牛肉の炒め物などのセットで150バーツ、そしてシンハービールが110バーツ。タイの物価で考えるとちょっと高め。ちょっと冷めかけていましたが、まずまずの味。これらの料理は、列車がハジャイを発車した後(18:45頃)に各席へ配膳されました。ハジャイでは前方に8両増結するため、その作業時間中に、軽食を抱えた売り子達が車内へ入り込んできます。
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左:夕食を食べ終わって片づけが済むと(20:00頃)、専門のクルーがやってきてベッドをセッティングする。実に手際よく座席をベッドに変えて、マットレスを敷きシーツを張る。上段ベッドになるところに枕やマットレスなどが収納されていました。
ちなみに私は下段。上段と下段では料金が違い、下段のほうがちょっと高めですが、その値段格差を上回る利便性や快適性が下段にはあります。階段を使わなくていいし、窓はあるし、上より若干広めだし…。ベッドがセットされたら、後は寝るだけ。窓の外は真っ暗なので何も見えません。
右:翌朝6:30頃にクルーがやってきて、ベッドを座席に戻します。そして間もなく朝食のオーダーが取られ、15分ほどで届けられました(90バーツ)。目玉焼き・ソーセージ・簡単なサラダ・食パン・ジュース・そしてコーヒーorティー。
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バンコクに近付くにつれ、線路周辺にはスラムが目立ってきます。レールのまわりにはゴミが散らかって汚らしく、列車のスピードも落ちて、何度も信号停車。
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10:45、やっとバンコク・ファランポーン駅に到着。約22時間の乗車。冷房のきいた車内に慣れた体にとって、うだる暑さのバンコクの空気はかなりしんどい。
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左:パダンブサールからバンコクまで牽引してきたタイ国鉄の機関車。
右:ファランポーン駅の待合室には床に座り込んで列車に乗り込む時を待つ客がたくさん
この後タクシーでホテルへ。今回宿泊したホテルはスクンビット通り沿いに建つON 8というところ。BTSナーナー駅目の前に立地しており交通の便は至極良好。こじんまりしているため見つけにくいかもしれませんが、フロントは笑顔で親切に対応してくれ、新しい建物なので総じて綺麗。そこかわり全室禁煙で窓は磨りガラスで嵌め殺し。部屋には2種類あって、私は値段の高いほう(といっても大して高くありません)を選びましたが、バスタブもあるし、部屋もまぁまぁの広さ、隅々まで手入れが行き届いていたので、気持ちよく連泊できました。ナナプラザにも近いので、ゴーゴーバーで遊びたい殿方にもいいのでは。
これにてマレー半島北上の旅程はおしまい。
このあとバンコクに数日滞在し、今度はLCC(格安航空会社)でマレー半島を南下してシンガポールへと戻りました。その時の様子は改めて記事にしたいと思います。
ところで私がバンコクに着いた時期、都心部ではタクシン派(赤シャツ隊)による反政府デモが繰り広げられていました。道路が一部封鎖されて、デパートも連日閉鎖。数日前にはカオサン付近で治安部隊との激しい衝突があり、日本人記者を含む死者が出ているほど事態は悪化していました。
なるべくデモの現場には近付かないようにしようと心がけていましたが、ひょんなことで最前線に出てしまいました。
乗り換えのため地下鉄シーロム駅で下車してBTSサラデーン駅へ向かっているとき、地上へ出る出口が一部に制限されているではないか。こりゃ何かあるなと思って、出入り可能な出口から外へ出てみると、案の定そこはデモ隊と治安部隊がにらみ合う最前線でした。道路の北のルンピニ公園側では赤シャツを着たデモ隊がシュプレヒコールをあげ、道路の逆サイドでは警官が隊列を組み、道路を見下ろすペデストリアンデッキは閉鎖されて、ライフルを持った兵士が警戒していました。歩道にはバリケードも置かれ、物々しい雰囲気。BTSサラデーン駅でもやはりライフルを持った兵士があちこちで哨戒していました。
ではサラデーン周辺は恐ろしい空気が流れているかと思えばそうでもなく、治安部隊と記念撮影をしている人もいれば、デモ隊の様子を面白がって撮影する観光客も多く、取材のテレビクルーも談笑しながらダラダラ撮影していました。これが4月20日時点の様子。
しかしこの後日に日に緊迫度は増してゆき、翌々日(22日)、私が地下鉄に乗っていると途中で止まってしまい、何かと思えばサラデーンでグレネードランチャーが発射されて死傷者が出てしまったとのこと。前日にサラデーンを歩いた時、赤シャツ隊のみならずその反対勢力も集結して大騒ぎになっていたので、これは怪しいなと感じていた矢先でした。
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左:ルンピニ公園側で集結している赤シャツ隊
右:道路を挟んで対峙する警官部隊
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BTSサラデーン駅近く(パッポン通り付近)にはデモ隊が駅へ闖入するのを阻止するため、こうしたバリケードが置かれていた。
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ちょっと北へ移って、MBKからサイアム駅方面を望む。タイヤのバリケードが組まれて道路は閉鎖され、赤シャツ隊が占拠している。道路左側には簡易トイレがずらっと並んでいる
今回私は幸い被害に遭いませんでしたが、その後もバンコクは市街戦のようなデモが1カ月近く続き、ついにはセントラルワールドが炎上崩壊するまでになってしまったわけです。デモは一応終息したようですが、ゲリラ化しているとの話も聞きますし、予断を許さない情勢のようです。早く平和なバンコクに戻ってほしいものです。
その3ではペナンからバンコクまで(4月19~20日分)を掲載します。
日程
4月17日:シンガポール →(列車)→ クアラルンプール
4月18日:クアラルンプール →(空路)→ ペナン
4月19日:ペナン → (フェリー) → バターワース →(夜行列車)…車中泊
4月20日:バンコク到着
ペナンは離れ小島なので、鉄道に乗るためには、半島側の対岸の街バターワースへ海を渡る必要があります。12時ぎりぎりにホテルをチェックアウトし、タクシーでフェリー埠頭へ。
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左:ペナン側フェリー乗り場の入り口付近。売店が並ぶ。
右:マレー鉄道の窓口もあるので、バターワースまで行かなくてもここで切符を購入できる。
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左:乗船通路。フェリーの料金は変則的で、バターワース(半島側)→ペナン(島)の場合は有料ですが、逆にペナン→バターワースの場合は無料。よって途中何もゲートらしきものを通らず、そのままフリーで乗船。
右:フェリーの客室にはガラスなど無く、屋根と柵と椅子があるだけ(小さな売店もある)。海を渡る風がそのまま吹き抜けてゆく。とても気持ち良い。なお船の下層階は自動車運搬スペース。
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さらばペナン。途中全面黄色塗装のフェリーと行き違う。
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20分弱でバターワースに到着。ペナンと比べてビルなどの大きな建物が明らかに少なく、鄙びた印象を受ける。浜に舫われたロングテイルボートがなんとも長閑な光景を作り出していた。
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バターワースの船着き場と鉄道駅およびバスターミナルは屋根付き通路で連絡されており、いずれも至近。
左:バターワースのバスターミナル。マレーシア各地へのバスが発着して賑やか。
右:バスターミナルの奥にある屋外食堂街でナシゴレンを食べる。猛烈に暑くて無風状態の中、汗を滝のように流しながら、ペプシとともに飯を腹に掻っ込む。
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左:バターワース駅。駅前にはSLが静態保存されている。
右:待合室入り口。チケット窓口はもちろんのこと、売店や両替所がある。これから長時間の乗車ゆえ、水2本と小腹が空いたとき用のスナック菓子を購入。
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左:駅の待合室はなんと冷房が利いていた。外は酷暑なので、まるで天国のよう。
右:待合室の片隅には、かつて使用されていた鉄道用品が展示されている。転轍機標識のランプ類が多く、その他通票や車番プレート、写真など。
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左:駅に掲示されている時刻表。一日4往復しか発着しない。寂しいねぇ…
右:ホームには乗車案内の看板が立っていますが、何しろ1日4本しか発車しないので、乗り間違えることはないでしょう
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頭端式ホーム。クアラルンプール方面列車もハジャイやバンコク方面列車もこのホームに発着する。何度も言うが、両方面併せて一日4往復。
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左:バターワース14:20発のバンコク行国際急行36列車。マレーシア国内はマレー鉄道のディーゼル機関車が牽引。
右:客車最後部。この列車はタイのハジャイまでたったの2両しか連結されない(ハジャイで8両増結)。それだけ列車で国境を超える客は少ないのだろう。なおこの客車はタイ国鉄所有のもので韓国・大宇製。
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左:2両の列車はすべて2等寝台(1等寝台はハジャイから)。車内は日本の583系寝台電車を2段にしたような構造で、昼間ボックスシートになっている座席が夜には下段の寝台となり、上部の出っ張りがパカっと開いて上段の寝台となる。従って寝る向きは進行方向と平行になる。
右:洗面台にはタイ語のハミガキの広告が掲示されており、これからタイへ向かうことを実感させてくれる。なおトイレはタイ式(和式のようにしゃがむスタイル)と洋式それぞれ1つずつ。紙も用意されていて、割ときれい。
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左:「バターワース←→バンコク」と書かれたサボ(行先表示板)。この列車がバンコクまで行く証し
右:今回の乗車で使用した切符。国境を越えるバンコク行は1日1本で、しかも上述のように2両しか連結されないので、できれば事前に予約しておくのが吉。しかし、この国際列車はタイ国内やマレーシア国内で運転される各列車と違ってネット予約はできないので、日本人が経営するバンコクの旅行代理店(たとえばプログラムDインターナショナル)などに手配してもらうこととなる。日本国内だとHISで手配可能(そのかわりかなり割高)。
この切符はマレー鉄道で発券されたものだが、当列車はタイ国鉄が運行管理している。何を言いたいかというと、どうやらこの列車はマレー鉄道とタイ国鉄で座席割り当てにそれぞれ枠があるらしく、もしタイ側で手配して満席だったとしても、マレー側から手配すると席を確保できる場合がある。この切符はまさにそれによって入手できたもの。
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列車は定刻通り出発。この列車は座席指定の切符を持っている客以外に、マレーシア国内ではいわゆる「ヒルネ(※)」利用が可能。途中駅から次々に地元民が乗り込んでくる。そして国境手前のARAU駅まででその全てが下車し、車内は指定券所持客のみになる。
(※)ヒルネ:日中において寝台車を一般の列車のように座席利用する乗車形態。
バターワースを出発後の車窓は、しばらくスラムのような水上家屋や小規模な街がポツポツ現れてからゴム林が続き、アロースター辺りから水田や畑が目立つようになって、国境に近付くにつれ耕作地が減ってゆく。この画像は国境付近。
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ARAU駅を出発してしばらくした頃にタイの入出国カードが配られる。そして18:15、国境の駅であるパダンブサールに到着。画像はパダンブサールのホームで、左側の建物がイミグレ。まずマレーシアの出国手続き。その1で書いたように、私のパスポートにはマレーシアの入国スタンプが捺されていないので、シンガポール発の列車に乗った時の切符(e-チケット)をパスポートと一緒に提出したら、向こうは心得たもので、すんなりOK。
続いてタイの入国手続き。在東京タイ大使館によると陸路入国にはビザが必要と説明されていますが、少なくともパダンブサールでは不要でした(実際私はノービザでした)。そのかわり滞在可能日数は15日間です(空路入国の場合は30日間)。
入国に当たってはてっきり手荷物検査があるのかと思いきや、荷物はノーチェック。それを知らずに私は重いスーツケースをコロコロ転がしてしまいましたが、結局無駄でした。事情を知っている人たち(特にマレーシア人)は荷物を車内に置きっぱなしでした。
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左:パダンブサールで車内クルーもタイ国鉄の人間に全て入れ替わり、出発してすぐに夕食のオーダーを取りに来る。西側の車窓には地平線に沈む真っ赤な夕陽が綺麗に輝いていました。
右:食堂車へ行かなくても、各席へクルーが夕食を届けてくれます。しかもいくつかメニューが選べます。トムヤムスープと牛肉の炒め物などのセットで150バーツ、そしてシンハービールが110バーツ。タイの物価で考えるとちょっと高め。ちょっと冷めかけていましたが、まずまずの味。これらの料理は、列車がハジャイを発車した後(18:45頃)に各席へ配膳されました。ハジャイでは前方に8両増結するため、その作業時間中に、軽食を抱えた売り子達が車内へ入り込んできます。
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左:夕食を食べ終わって片づけが済むと(20:00頃)、専門のクルーがやってきてベッドをセッティングする。実に手際よく座席をベッドに変えて、マットレスを敷きシーツを張る。上段ベッドになるところに枕やマットレスなどが収納されていました。
ちなみに私は下段。上段と下段では料金が違い、下段のほうがちょっと高めですが、その値段格差を上回る利便性や快適性が下段にはあります。階段を使わなくていいし、窓はあるし、上より若干広めだし…。ベッドがセットされたら、後は寝るだけ。窓の外は真っ暗なので何も見えません。
右:翌朝6:30頃にクルーがやってきて、ベッドを座席に戻します。そして間もなく朝食のオーダーが取られ、15分ほどで届けられました(90バーツ)。目玉焼き・ソーセージ・簡単なサラダ・食パン・ジュース・そしてコーヒーorティー。
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バンコクに近付くにつれ、線路周辺にはスラムが目立ってきます。レールのまわりにはゴミが散らかって汚らしく、列車のスピードも落ちて、何度も信号停車。
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10:45、やっとバンコク・ファランポーン駅に到着。約22時間の乗車。冷房のきいた車内に慣れた体にとって、うだる暑さのバンコクの空気はかなりしんどい。
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左:パダンブサールからバンコクまで牽引してきたタイ国鉄の機関車。
右:ファランポーン駅の待合室には床に座り込んで列車に乗り込む時を待つ客がたくさん
この後タクシーでホテルへ。今回宿泊したホテルはスクンビット通り沿いに建つON 8というところ。BTSナーナー駅目の前に立地しており交通の便は至極良好。こじんまりしているため見つけにくいかもしれませんが、フロントは笑顔で親切に対応してくれ、新しい建物なので総じて綺麗。そこかわり全室禁煙で窓は磨りガラスで嵌め殺し。部屋には2種類あって、私は値段の高いほう(といっても大して高くありません)を選びましたが、バスタブもあるし、部屋もまぁまぁの広さ、隅々まで手入れが行き届いていたので、気持ちよく連泊できました。ナナプラザにも近いので、ゴーゴーバーで遊びたい殿方にもいいのでは。
これにてマレー半島北上の旅程はおしまい。
このあとバンコクに数日滞在し、今度はLCC(格安航空会社)でマレー半島を南下してシンガポールへと戻りました。その時の様子は改めて記事にしたいと思います。
ところで私がバンコクに着いた時期、都心部ではタクシン派(赤シャツ隊)による反政府デモが繰り広げられていました。道路が一部封鎖されて、デパートも連日閉鎖。数日前にはカオサン付近で治安部隊との激しい衝突があり、日本人記者を含む死者が出ているほど事態は悪化していました。
なるべくデモの現場には近付かないようにしようと心がけていましたが、ひょんなことで最前線に出てしまいました。
乗り換えのため地下鉄シーロム駅で下車してBTSサラデーン駅へ向かっているとき、地上へ出る出口が一部に制限されているではないか。こりゃ何かあるなと思って、出入り可能な出口から外へ出てみると、案の定そこはデモ隊と治安部隊がにらみ合う最前線でした。道路の北のルンピニ公園側では赤シャツを着たデモ隊がシュプレヒコールをあげ、道路の逆サイドでは警官が隊列を組み、道路を見下ろすペデストリアンデッキは閉鎖されて、ライフルを持った兵士が警戒していました。歩道にはバリケードも置かれ、物々しい雰囲気。BTSサラデーン駅でもやはりライフルを持った兵士があちこちで哨戒していました。
ではサラデーン周辺は恐ろしい空気が流れているかと思えばそうでもなく、治安部隊と記念撮影をしている人もいれば、デモ隊の様子を面白がって撮影する観光客も多く、取材のテレビクルーも談笑しながらダラダラ撮影していました。これが4月20日時点の様子。
しかしこの後日に日に緊迫度は増してゆき、翌々日(22日)、私が地下鉄に乗っていると途中で止まってしまい、何かと思えばサラデーンでグレネードランチャーが発射されて死傷者が出てしまったとのこと。前日にサラデーンを歩いた時、赤シャツ隊のみならずその反対勢力も集結して大騒ぎになっていたので、これは怪しいなと感じていた矢先でした。
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左:ルンピニ公園側で集結している赤シャツ隊
右:道路を挟んで対峙する警官部隊
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BTSサラデーン駅近く(パッポン通り付近)にはデモ隊が駅へ闖入するのを阻止するため、こうしたバリケードが置かれていた。
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ちょっと北へ移って、MBKからサイアム駅方面を望む。タイヤのバリケードが組まれて道路は閉鎖され、赤シャツ隊が占拠している。道路左側には簡易トイレがずらっと並んでいる
今回私は幸い被害に遭いませんでしたが、その後もバンコクは市街戦のようなデモが1カ月近く続き、ついにはセントラルワールドが炎上崩壊するまでになってしまったわけです。デモは一応終息したようですが、ゲリラ化しているとの話も聞きますし、予断を許さない情勢のようです。早く平和なバンコクに戻ってほしいものです。