温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

日光中禅寺温泉 中禅寺金谷ホテル 前編(客室・食事)

2021年05月20日 | 栃木県

(2020年夏訪問)
今年(2021年)は全国的に梅雨入りが早く、さわやかな季節はあっという間に過ぎ、本来ならば風が薫るはずの5月半ばで早くもジメジメムシムシと不快な気候になってしまいました。梅雨は長いのかしら、梅雨明けの猛暑は今年もひどいのかしら・・・。暑さが苦手な私は、今後しばらくの気候を考えると憂鬱になってしまうため、せめてブログ内だけでも気分を晴らそうと、昨年避暑目的で宿泊した日光中禅寺温泉「中禅寺金谷ホテル」を取り上げます。

金谷ホテルといえば日光屈指の名門リゾートホテルであり、東照宮付近と中禅寺湖畔でそれぞれホテルを営業していますが、昨年夏に訪ねたのは温泉が引かれている後者の方です。中禅寺湖畔の木立の中に立地しており、建物自体も木材を多用することで周囲の環境との調和を図っています。老舗の風格と現代的なデザインを折衷させたすばらしいリゾートホテルです。

●館内

館内もラグジュアリー感たっぷり。上画像はフロント前のロビー。重厚感のある暖炉等によって山小屋的なイメージを惹起させてくれます。


2階ラウンジではコーヒーや紅茶のサービスが提供されており・・・


座り心地の良いソファーに腰かけ、談笑しながらのんびりとしたひと時を過ごせます。

●客室

今回利用した客室(ツイン)は、おそらくこのホテルでは一般的なクラスではないかと思います。
各客室には・・・


木製のベランダがあり、木々の向こうに広がる中禅寺湖を眺めることができます。
宿泊した日、下界は猛暑続きでしたが、中禅寺湖畔には涼しく爽やかな微風が吹いて実に心地良く、エアコン要らずで快適に過ごすことができました。エアコン漬けの毎日ですと体調がおかしくなりますが、天然のクーラーは体に優しいので、次回記事で紹介する温泉入浴と併せて、すっかり心身の元気を取り戻すことができました。都市部でクーラーを使いながら暑さに耐えるのではなく、みんなで標高の高いところへ避暑した方がよほど健康的ですし、地方経済も潤いますし、電力消費も減るので、いろんな意味でエコロジー&エコノミーではないでしょうか。


●食事

老舗リゾートホテルに泊まったからには、ご自慢のお食事を楽しみたいもの。
夕食はフルコースで、予約時にいくつかのコースから選択することができます。
上画像に写っているものは以下の通り。
前菜:キャビア添え香鶏と日光湯葉の冷製
魚:金谷ゆずサーモンの白ワイン蒸し
肉:霜降高原牛フィレ肉のステーキ 栃木県産赤ワインソース
サラダ:鶉のローストと根セロリのピュレ サラダ仕立て
この他、肉料理の前にゆずのグラニテも供されました。
いずれも栃木県の食材を使って工夫を凝らしており、とっても美味。


今回の予約時にお願いしたコースは「皇室の愛した料理たち」という仰々しい名前なのですが、このコースで最も異彩を放っており、本コースたらしめている料理が大正天皇即位礼饗宴の儀の際に供されたとされるザリガニのポタージュスープ「蝲蛄濁羹」です。
上画像がそのザリガニポタージュ。どこにザリガニがいるのか? かにかにどこかに?


みっけ! ちなみにザリガニの身もスープの中に入っています。私は子供の頃に、田んぼや水路に入ってザリガニを捕まえていましたが、あのザリガニが何故こんなに香ばしく美味しくなるのかしら。中国等で食べられるスパイシーな味付けのザリガニも美味しいのですが、それとはまた異なる、実に上品で香り高い味わいです。

大正天皇が即位する頃の日本は兎にも角にもヨーロッパに倣っていろんなものを模倣しますが、当時欧州で高級食材だったザリガニの食用もそのひとつ。1915年(大正4年)の大正天皇御大典用として、北海道支笏湖で獲れた在来種の二ホンザリガニ4000匹を京都御所へ運ぶにあたり、その一部を御用邸がある日光の冷たい水で一時飼育していたようです。宮内庁の資料「大礼記録」によれば実際に御大典でザリガニポタージュ「蝲蛄濁羹」が供されたことが記されており、その前後にも大正天皇の料理番を務めていた秋山徳蔵によってしばしば宮中晩餐にザリガニが食材として採用されたそうです。日光の御用邸は病弱だった大正天皇のために建てられましたから、大正天皇は当地で飼育されていたニホンザリガニを何度も召し上がったのでしょうね。

さて、支笏湖から日光へ運ばれ飼育されていたニホンザリガニの一部は生け簀から逃げちゃったのですが、それから100年近く経過した2006年に、日光の大谷川でニホンザリガニが発見され、その遺伝子や形状、そしてザリガニの体に共生していたヒルミミズを調べてみると、支笏湖の個体と共通していることが判明しました。生け簀から逃げ出したザリガニの子孫が連綿と命をつなぎ続けていたのです。このニホンザリガニを当地の名産にできないかと考えた栃木県内の関係者はいろいろと試行を重ね、県立馬頭高校水産科がザリガニの臭みを抜く方法を考案して、そのザリガニを食してみたら、あらまぁ美味しいじゃありませんか、ということで金谷ホテルでこのような料理が提供されることになったんですね。大げさに言ってしまえばロイヤルクレイフィッシュなのですから、道理で田んぼのアメリカザリガニとは違うはずです。


こちらは食後のデザート。
大変おいしゅうございました。


朝食もレストランでいただきます。もちろんタマゴ料理はお好みをチョイスできるので、私はsunny-side upをお願いしましたが、オムレツやスクランブルエッグもOKです。金谷ホテルといえばベーカリーも有名ですよね。当然パンも美味です。

さて、胃袋を満たしたところで、次回記事では温泉浴場を取り上げます。

次回に続く

コメント (2)
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